死亡率が97%にも上る珍しいアメーバにフロリダに住む男性が感染しました。このアメーバは湖や川、熱泉などの淡水に見られ、鼻から身体に侵入して脳に致命的なダメージを与えます。フロリダ州厚生局(Department of Health)は住民に警報を発しつつも、有効な予防手段を講じる限りこの夏野外での水泳を制限することはないとしています。
このアメーバ(学名Naegleria fowleri)を含んだ水を吸入するとアメーバは人体に取り込まれ、嗅覚神経を経由して脳へ移動します。ひとたび到達すれば脳の組織を食べながら急速に増殖。これが体の免疫反応を引き起こし、脳が膨れ上がって致命的な損傷を受けることになります。
感染者には頭痛、発熱、吐き気と嘔吐、方向感覚の喪失、発作、幻覚などの症状が現れます。悪いことにこの症状は髄膜炎とほぼ同じで、誤診によって治療が遅れることもままあります。世界でも珍しい病気ですが症例の多くは米国南部州で発生しており、また泳ぐ人が増える夏季に集中しています。
フロリダ州厚生局は住民に対して鼻と淡水や水道水の接触を避けるよう努め、また沈殿物をかき回すこともアメーバとの接触を増やすため止めるよう警告しています。このアメーバは宿主を必要とせずに生きられますが、飲み込んでしまえば害はありません。
しかし、ダイビングなどで水が鼻から入ると大変な結果を招くのです。ただ厚生局は「病気の発生は稀で、有効な予防手段をとれば安全でくつろいだ水泳シーズンが楽しめることに注意してほしい」としています。
米国内で145件知られているアメーバ(Naegleria fowleri)感染例のうち、生存例は4件しかありません。決定的な感染を生じる割合は低いものの、アメーバが温かい淡水を好むことから、気候変動による水温上昇に伴って米国北部州での症例が増えている点に専門家が危惧を示しています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の疫学者であるジョナサン・ヨーダー氏はインサイダー誌のインタビューでこう述べています。「私たちが病気を追跡した中で最初の数十年間、症例は米国南部に限られていました。しかしこの10年位の間インディアナ、ミネソタ、ミズーリなどの北部州でも新たな症例が見つかっているのです。」
専門家は地球全域での水温上昇によって以前見られなかった地域でもアメーバが繁殖する可能性があると警告しており、危険は米国内に留まりません。合衆国国立公園局の公衆安全計画を監督した経験を持つボウリング・グリーン州立大学(オハイオ州)のトラビス・ヘギー准教授も、インサイダー誌に次のような警告声明を出しています。「このアメーバは世界中の土壌断面に存在し、しかも自然発生しているのです。」
アメーバが自然界に多く存在するにも関わらず感染数が比較的小さいという不均衡がなぜ生じるのかはまだ明らかになっていません。しかしCDCは水遊びをするアメリカ人に対し、温かい淡水には殺人アメーバがいることを前提に適切な予防措置を取るよう勧告しています。
reference:iflscience