3,000年前、『絶叫する女性ミイラ』はなぜそんなに苦しそうな表情で亡くなったのでしょうか?エジプトのカイロ大学の放射線学者と考古学者がいくつかの仮説をもとに研究をした結果、彼女を殺害した犯人は心臓発作であるとしました。
CTスキャンによって、この女性は心臓の血管がプラークで詰まり閉塞する危険性のある深刻な冠動脈のアテローム性動脈硬化に苦しんでいたことがわかりました。頚動脈や腹大動脈、回腸動脈、下肢の動脈にもアテローム性動脈硬化が見られました。
このミイラが心停止で死亡したと断定することはできませんが、心臓に深刻な問題を抱えていたことは確かなようです。研究結果を考慮すると、このプロジェクトに参加した有名なエジプト考古学者のザヒ・ハワス博士の説明によると、この女性は心臓発作を起こし、口を開けた状態のまま死後硬直したようなのです。
「この『絶叫する女性』の死体は死後硬直が起こるまで数時間は発見されなかったと推測しています」とエジプトに考古省を設立したハワス博士は声明を出しています。
現代ではアテローム性動脈硬化は不健康な食生活や運動不足、喫煙によって患う典型的な病気です。しかし古代エジプト人においては状況が少し違うようです。2014年の研究では、古代のミイラに見られるアテローム性動脈硬化の兆候は微生物や寄生虫、焚き火の煙の吸入による炎症によるものだと主張しています。
3,100年前の女性ミイラは1881年にエジプト南部の都市、ルクソール付近で初めて発見されました。考古学者はこの遺体とともに『絶叫する男性ミイラ』として後に知られることとなった別の(おそらくこちらのほうがより有名な)ミイラを発見しています。2012年の研究で、若い男性の遺体はかつて王位を奪うために父を殺害した罪で喉を切られて死亡したラムセス3世の息子ペンタウアーという人物に仕えていたことがわかりました。
しかし『絶叫する女性ミイラ』の身元はよくわかっていません。ミイラを包む麻布にはエジプト文字で『王の娘、メレット・アモン王の妹』と記されています。しかしこの名前の王女はたくさん存在し、身元を特定するほかの証拠がほとんど見つかっていないのです。研究チームは絶叫する女性がいったい誰なのか特定することを期待してDNA分析によって研究をフォローアップしようとしています。
reference:iflscience