マイクロプラスチックは悪名高い汚染物質でその存在は海底にまで及び、サメなど海洋動物の胃にも入り込んでいます。「Environmental Pollution」に掲載された最新の研究でマイクロプラスチックがエビの健康に与える影響を調査しているのですが、驚いたことにその影響は皆無に等しいものでした。
この研究ではマイクロプラスチックが人間の消費行動に与える影響も調べていて、プラスチックの人体汚染に関してはエビが汚染源であるとは言えないという結論でした。
バルセロナ自治大学(UAB)の研究チームがマイクロプラスチック汚染の割合を調べる目的で最初に分析したのは深海に住むエビ(Aristeus antennatus)のサンプルです。その結果、4匹のうち3匹の消化管に合成繊維が含まれていることが分りました。
汚染が見られたエビのうち半数では繊維が胃に蓄積し、絡まってかなりの大きさの玉となっていました。地理上の位置も重要で、バルセロナ沿岸で採取したエビには他のエリアに比べてはるかに多くの合成繊維が含まれることも分かりました。
しかしエビの健康に対する影響は不明で、胃の中に大きな合成繊維の玉を抱えた個体にも健康被害の兆しはありませんでした。研究チームはエビの器官の中に損傷組織の痕跡を探しましたが、繊維と直接接触した器官にも傷はありませんでした。チームの仮説では、外骨格が脱皮する際に溜まった繊維を捨てている可能性があるとのことです。
人体の健康に関する調査でも結果は良好で、異物の量が少ない上にエビの胃は頭部にあるため、食べてもほとんど危険がないことが分りました。多くの人はエビを食べる時に頭を捨ててしまうからです。
今回の研究に携わったUABのエステル・カレラス講師は声明の中でこう述べています。「エビの消費に関して心配となるような汚染はないと言えます。他の研究でもエビから体内に入るマイクロプラスチックは他の経路、例えばビニール包装、環境汚染、衣服の合成繊維、塵や食卓に紛れ込む物質などを通して取り込まれる量に比べれば無視できるほど少ないことが示されています。」
研究チームは今後ヒメジ(red mullet/surmullet)、アンチョビなど一般的に消費される魚の汚染状況を分析し、魚とそれを食べる人間に対するマイクロプラスチックの影響が本当に存在しないのかを調べようと考えています。
reference:iflscience