キリストが出現したトーストや家に生まれ変わったヒトラーなど、私たちの脳は顔などないはずの生き物ではない物体に日常的に顔が見えるという奇妙な技を持っています。Psychological Scienceに掲載された新たな研究によると、このようなおかしな錯覚がおこるのは、人の顔の特徴を暗号化する神経メカニズムがほかの画像を処理することにも使われているからだというのです。
パレイドリアとして知られ、郵便ポストや果物の断片などに顔が見えてしまう私たちの目は、特定の神経が顔を認識し重要な社会情報(その人の感情やこちらを見ているのかなど)を得ようとするためです。
以前の研究では、この神経は感覚順応の影響を受けやすいため、過去にインプットされたものに基づいて特定の状況の読み取りを修正します。この現象について論文著者のコリン・パルマー氏が声明で、「例えば左を向いた顔写真を繰り返し見ると、あなたの知覚はいずれ変化し実際よりも右側を向いているように見えてきます」と説明しています。
このメカニズムがパレイドリアによっても誘発されるのかをテストするため、研究者らは志願者に同じ方向を見つめている顔のように見える生き物ではない物体の一連の写真を見せました。
そして参加者にまっすぐ向いた人間の顔の画像を見せると、パレイドリア画像で見えた顔が向いていた方向と反対方向を見ているように見える傾向がありました。つまり、左側を向いた顔に見える箱やボウリングのボール、ハンドバッグなどを見た後に、まっすぐ前を向いた人間の顔を見るとわずかに右を向いているように感じるのです。
「これはパレイドリアを経験するときと人の顔を見るときに活発になる神経メカニズムが一致している証拠です。」
論文著者は、顔を認識しようとするのはおそらく進化的適応によるもので、他人の表情から空気を読むように順応したのだろうと思われます。おかしなエラーを起こすこともあるとはいえ、これは社会的交流に頼りきって生き延び、繁栄している種にとって必要不可欠なスキルなのです。
reference:iflscience