太陽系第8惑星「海王星」 。
この不思議な雰囲気をまとった青い星は、直径が地球の約4倍。前回落下した天王星よりもわずかに小さいものの、質量は天王星を上回ります。
太陽から極めて遠く離れているため、これまでに探査機が海王星を訪れたことは一度しかありません。その唯一の探査機がボイジャー2号。天王星も訪れたことのある、ボイジャー2号は1989年8月に海王星とその衛星トリトンの近くを通過し、この星の詳細な成分を解き明かすことに成功しました。
海王星の研究は主に地上望遠鏡によって行われてきたので、この惑星の凍った内部については未だ多くの謎が残されています。しかし、ボイジャー2号の探査と地上から集めたデータによって海王星の構造と組成について解明されている部分もあるのです。
では、海王星についての予備知識はこのくらいにして落下を開始しましょう。海王星の奥底には何があるのでしょうか?無事帰還することはできるのでしょうか?
今回は、海王星に落ちるとどうなるのか?についてご紹介したいと思います。
海王星の大気は主に水素とヘリウムによって構成されています。海王星が深い青色である理由は上層大気にメタンが含まれているためです。メタンが赤い光を吸収し、鮮やかな青色のみを反射した結果青く見えるのです。
では、落下しましょうか。当然、バイエンススーツを着用しています。天王星にも訪れているため、スーツに損傷がなければいいですが。
海王星に落ちていく際に、あなたは薄い環を目撃することができるかもしれません。海王星にも木星や土星、天王星と同様に環が存在しており、5つの環は主に塵によって構成されています。
そして、だんだんと海王星に近づくにつれて、荒れ狂う嵐による壮大な景色が広がっていきます。海王星の重力は地球より14%大きいだけであるため、当初は地球の大気中を落下するのと同じような速度で落ちていきます。太陽系の外縁にある海王星は太陽からとても遠いため、太陽の光はほとんど届かず、地球の夕暮れ時のような薄暗さに包まれています。
まずは、高所にあるメタンの氷の結晶でできた白い巻雲の中を落ちていきます。この高度では大気圧が0.5気圧、つまり、地球の海水面気圧の半分ほどであり、気温は摂氏マイナス200度を下回る猛烈な寒さです。
50キロほど落ちていくと約5気圧のアンモニアと硫化水素の雲の層に入ります。海王星では時速2,400キロにも達する、太陽系で最速の風が吹いており、これは音速の約2倍。バイエンススーツがなければ、この暴風により木っ端微塵となっていることは間違いありません。そもそも、この地点までたどり着くこともできないと思いますが。
そして、海王星は太陽から遠いうえ、厚い雲に覆われているため、この深さまで届く光はありません。あなたは凍りつく暗闇の中で、たった一人、強風がスーツの外側で吹き荒れているのを感じることができます。
長い時間をかけて落下し、海王星の内部へ160キロほど突入しました。真っ暗な周囲で巨大な稲妻が閃めき、そびえ立つ白い水氷の雲が雷鳴をとどろかせながら暴風を巻き起こしているのが見えます。この雲の層を通って行く間に大気圧は50気圧を優に上回るほど高まり、気温は摂氏26度ほどになります。
真っ暗な嵐の中を落ちていく中で海王星を訪れたことを後悔するでしょうが、この程度ではまだ大したことはありません。
水でできた氷の雲の底から出ると気圧が激しく上がり、気温は摂氏1,000度を超えるまで急上昇します。非常に長い間、落下し続けて約6,400キロ沈んだところで、謎めいたマントルの層に到達します。ここでは、あなたのスーツは1万気圧以上の圧力と摂氏4,000度を超える温度に耐えなくてはなりません。
この未知の超高温の層は水の氷、メタンの氷、アンモニアの氷でできていますが、強烈な圧力によって高温で高密度の流動体になっています。この高い圧力の環境では、天王星と同じくダイヤモンドの雨が降っていると考えられています。
あなたはこのダイヤモンドを持ち帰りたいでしょうが、今のうちに言っておきます。海王星から無事に帰還しても地球に帰れませんよ。あなたが落ちるべき場所はまだたくさんあります。
そして、この高密度の領域を長い時間をかけて沈んでいく間、圧力と温度は著しく上昇し続けます。 海王星の奥深く、数千キロの地点で、あなたはこの星の核に到達し、ここでは摂氏5,000度を超える温度と700万気圧を上回る圧力となっています。その表面は岩石や鉄、氷といった地球の物質とほぼ同じものでできていますが、 もしかすると、ダイヤモンドが積もってできた層もあるかもしれません。
これにてミッション完了。おめでとうございます。天王星と海王星を落下した者はあなたが初めてです。では、私はお先に。
今回のバイエンスはここまで、海王星に落ちた者、その後…でお会いしましょう。