アンドロメダ座に明るく輝くアンドロメダ銀河。
地球からおよそ250万光年の距離に位置し、肉眼で見える最も遠くにある天体と言われています。その直径は22光年~26万光年であり、我々の住む天の川銀河の直径10万光年と比べると2倍以上の大きさを持っています。
この巨大な銀河にも地球のような星があり、人間のような知的生命体がいるのではないか、アンドロメダ銀河に訪れて確かめてみたいと考える人も多いことでしょう。
ですが、その距離は250万光年、人間にとってはどうしようもありません。そんな中、朗報です。なんとアンドロメダ銀河は人間が住む天の川銀河目掛けて接近しているというのです。
遠く離れた銀河が衝突するようなことがあるのでしょうか?衝突した場合、太陽系は無事でいられるのでしょうか?
今回は、天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
局部銀河群と呼ばれる60個以上の銀河が構成する集団にこれら2つの銀河が所属しています。
この局部銀河群の中でも天の川銀河とアンドロメダ銀河が飛び抜けて大きい銀河です。2つの巨大な銀河が衝突すると考えるとワクワクしてきますね。
しかし、そもそも、250万光年も離れたアンドロメダ銀河が天の川銀河に衝突するようなことはあり得るのでしょうか?
アンドロメダ銀河と天の川銀河は重力で互いに引きあっており、なんと約45億年後には衝突してしまうと予想されています。
今でも2つの銀河は時速40万キロメートルという我々の感覚からすると非常に速い速度で接近しており、250万光年という非常に長い旅路を経て2つの銀河が衝突し最終的には巨大な一つの銀河になるというのです。
事実、我々の住む天の川銀河も他の銀河と衝突・合体を繰り返した結果、現在の姿になったと考えられています。
それでは45億年というはるか未来に2つの銀河はどのように衝突するのでしょうか?
欧州宇宙機関による2019年の計算によると、45億年後に最初の衝突が起きるとのこと。衝突とは言っても最初の衝突はかすめる程度のものだと考えられています。
初めに、天の川銀河とアンドロメダ銀河は、約42万光年離れた位置まで接近します。このとき2つの銀河は直接交わるわけではなく、銀河に含まれるダークマターが集まってできたダークマターハローと呼ばれる部分が接触します。
これが最初の衝突です。最初の衝突による摩擦で銀河の移動速度が落ちて、お互いが引っ張りあうことでUターンをするようにして再び衝突します。
このような衝突を何度も繰り返しながら最初の衝突から10億年以内に2つの銀河は合体し1つの巨大な楕円銀河になると考えられています。
合体して完成する銀河は、2つの銀河の名前である「ミルキーウェイ」と「アンドロメダ」を組み合わせて「ミルコメダ」と呼ぶ人もいます。そして、この研究以前までは2つの銀河は正面衝突すると考えられていました。
先ほどご紹介した欧州宇宙機関の計算ではこれまで観測が困難であったアンドロメダ銀河の横方向の動き、つまり回転も考慮に入れて計算されています。
数十億年という長い年月の話なので今後も観測精度の向上や計算技術の発達などにより計算結果が変わることも十分ありえる話でしょう。
2つの銀河が正面衝突する場合も見ておきましょう。まず、40億年後に2つの銀河が互いを一旦すり抜けて遠ざかります。その約11億年後にお互いの重力で再び引き寄せられて再度衝突します。
さらに20億年後、今から数えると71億年後に、2つの銀河が合体し1つの楕円銀河になると考えられていました。
いずれにしても天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突すると最後は巨大な1つの楕円銀河になるという結果は変わらないようです。
物騒なことが起こるとはいえ、地球に住む人間にとって知っておきたいのはただ一つ。2つの銀河が衝突することで地球、そして太陽系に影響はあるのかということでしょう。
不幸中の幸いなのか、銀河同士が衝突しても太陽系やそこに暮らす生命に大きな影響はないと考えられています。恒星同士の距離が非常に離れているため、たとえ銀河同士が衝突しても恒星はほとんど衝突しないためです。
例えば太陽から最も近い恒星であるケンタウルス座のアルファ星との距離は4.3光年であり、太陽の直径は約140万キロメートルです。計算すると、太陽から一番近い恒星までの距離ですら太陽の300万個分離れていることになります。
もう少し身近なものに例えてあげましょう。太陽が東京にある1円玉だとした場合、ケンタウルス座のアルファ星は約300km先、大体仙台あたりを時速2mmで動く1円玉です。
一方、銀河はというと天の川銀河の直径は10万光年であり、アンドロメダ銀河の中心までの距離は250万光年。2つの銀河は天の川銀河25個分しか離れていないのです。よくわからないですね。
とりあえず、銀河同士の距離は、銀河のスケールで考えると意外と近いと言えるのかもしれないということです。このことから銀河同士の衝突が起こったとしても恒星同士の衝突はほとんど起きません。
太陽系も無事だと考えて良いでしょう。しかし、衝突のしかたによっては太陽が天の川銀河からはじき出されたり、重力の影響で銀河のより外縁に追いやられたりするという論文も存在します。
太陽系が無事ならば地球は太陽の周りを公転し続けます。衝突の影響で公転軌道は変わるかもしれませんが。地球の夜空に見える2つの銀河の衝突は非常に壮大になることでしょう。
夜空に輝くアンドロメダ銀河は天の川銀河に接近するにつれてどんどんと大きくなっていきます。やがて天の川銀河の重力の影響を受けて形が歪んでいく様子が見えるはずです。次に起こるのが銀河のUターンと衝突です。
銀河を構成するガスが衝突によって圧縮されることで爆発を引き起こします。この過程で新たな星が生まれます。ガスが爆発して星が誕生する際のたくさんの光で、地球の夜空では最高に美しい光景を見ることができるでしょう。
もっとも、夜空が美しい光景を見せてくれているとき地球上にそれを観測できる生命がいるかどうかは別の問題です。太陽は50億年後には水素を使い果たし、その後、赤色巨星となることは以前動画にしましたね。
ちょうど、天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する頃、太陽は赤色巨星に変化し始めています。この過程で太陽は明るさをまし、膨張していき、水星と金星は太陽に飲み込まれ、地球は太陽の熱さで灼熱となっていることでしょう。
この環境では人類は到底生きていけません。遠い未来の宇宙の話は眠れなくなるほど興味深いですが、今を生きる人間にとってはどうでもいいことなのは間違いありません。