どの集団にも属さず、孤独に宇宙を彷徨う『浮遊惑星』という天体

この広い宇宙、恒星などの強い重力を持つ天体は周囲に比較的小さな、惑星と呼ばれる天体を従えており、惑星系という集団で宇宙空間を移動しています。

そして同じく、私たちの住む地球は、太陽という恒星の周りを公転し続けています。他にも太陽は、自らの重力で地球や火星、木星や天王星といった惑星、さらには彗星や小惑星を引きつけ、惑星系を形作っているのです。

ところが、広い宇宙空間には当然イレギュラーな天体も存在しています。なんと、どの恒星にも束縛されていない惑星サイズの天体が存在しているのです。

つまりはたった一人でこの広大な宇宙空間を漂っている天体。その存在こそが今回のバイエンスで紹介する「浮遊惑星」と呼ばれる星です。

どの恒星にも属さず、一人で宇宙を彷徨い続けるこの浮遊惑星はいかにして誕生するのでしょうか?実際に発見されている浮遊惑星はどのような天体なのでしょうか?

今回は宇宙を孤独に彷徨う「浮遊惑星」についてご紹介したいと思います。

浮遊惑星はいかにしてこの宇宙に誕生するのでしょうか?現在、浮遊惑星が誕生する原因として大きく2つの説が唱えられています。

一つ目の説が、地球や木星のように、もともと主星を公転している惑星であったものが、何らかの理由で弾き出されたことで、独りで宇宙空間を漂うことになったというものです。

主星から惑星がはじき出される要因は、別の恒星や強い重力をもつブラックホールであると考えられています。集団から星が仲間外れにされる様はどこか人間関係に重なるものを感じるかもしれません。

そして、2つ目の説は恒星が惑星レベルの質量に変貌を遂げることで浮遊惑星が出来上がるというものです。この説は、比較的最近明らかになった考えであり、これにより全ての浮遊惑星が元惑星というわけではないことが明らかとなったのです。

望遠鏡の性能が向上したことで、私たちの住む銀河系でもいくつかの浮遊惑星が発見されています。そのひとつが、2013年に地球から約300光年彼方で発見された「HD106906b」です。

この浮遊惑星は、もともと「HD106906」という恒星の周りを公転していたと考えられています。しかし、偶然近くを通り過ぎた別の恒星の重力の影響で、「HD106906」から970億キロメートル離れた場所まで飛ばされたというのです。

太陽系でもっとも外側にある惑星の海王星でさえ太陽から45億キロメートル程度しか離れていないため、いかにこの浮遊惑星が恒星から遠くまで飛ばされてしまったかがわかるでしょう。

また、地球に近い場所でも浮遊惑星が見つかっています。それが、地球から約20光年離れた場所に漂う「SIMPJ01365663+0933473」です。

褐色矮星と呼ばれる天体で、質量が大きくないために水素が核融合を起こさず、太陽のような燃え盛る恒星になり損ねたのです。

「SIMPJ01365663+0933473」の表面温度は摂氏約825度。この「SIMPJ013…。名前が長いので「シンプ」とでも呼んでおきましょうか。このシンプは半径が木星の1.2倍であり、質量は12.7倍もあるという巨大浮遊惑星。

そして驚くのはまだ早い、なんとシンプの磁力は木星の約200倍もあります。これだけ強力な磁力をもつため、シンプではオーロラが見られると考えられています。

地球上では、太陽風に含まれるプラズマ粒子が地球大気に含まれる酸素原子や窒素原子と衝突した際に、オーロラが発生します。ところがシンプの作り出すオーロラは、木星で発生するオーロラに似た現象が起きていると予想されています。

木星の場合、衛星「イオ」に由来する酸素や硫黄のイオンが木星の強い磁気によって加速され、木星大気と衝突することで激しいオーロラを生み出します。シンプの場合には、木星よりもさらに強い磁気をもつため、非常に激しいオーロラが発生している可能性が高いでしょう。

では、浮遊惑星は一体宇宙にどのくらい存在しているのでしょうか。たとえば、太陽系には8つの惑星が存在するので、浮遊惑星は恒星の数の8倍前後であるとあなたは考えるかもしれません。

ですが、宇宙は人間の想定を遥かに超える領域です。アメリカのオハイオ州立大学の研究チームがコンピューターシミュレーションで浮遊惑星の数を予測した結果、私たちの住む天の川銀河だけでも恒星の数の約10万倍もの浮遊惑星が存在することが明らかになったのです。

天の川銀河の恒星の数が2000億から4000億個であると考えられているので、計算するのも億劫になるほど数多くの浮遊惑星が存在するというわけです。

この途方もない数の浮遊惑星の一つが奇跡的に太陽の重力に捉えられ、地球に衝突する可能性はないのでしょうか。結論から言うと、0とは言えないものの、その可能性は非常に低いことでしょう。

太陽系にもっとも近い惑星系でさえ、4.3光年も離れています。光の速度が秒速30キロメートルですので、4.3光年をキロメートルに換算すると。やはり計算するのはやめておきましょう。

ともかく、これだけ広い宇宙に、恒星の10万倍の浮遊惑星が存在しても、まだまだ宇宙空間はスッカスカというわけです。

広大な宇宙空間を彷徨い続けている浮遊惑星。他者との共存によって反映している人間からすると、彼らは孤独で寂しい存在に感じるかもしれません。ですが、はたして彼らは孤独なのでしょうか?

他の天体からの影響を受けずに存在することができている浮遊惑星は何より自由な存在であるとも言えるのではないでしょうか。孤独と自由とは考え方によって、大きく変化するものなのかもしれません。



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