巨大魚の口を掃除する魚がもつ『意外な協調性』

主に太平洋やインド洋の暖かい海に生息するホンソメワケベラという魚がいる。彼らは、クエやマハタなどの巨大魚についた寄生虫や食べかすなどを食べることで掃除してあげるのだ。

ところが、面白いことにホンソメワケベラは寄生虫がそれほど好きではないのだ。彼らが巨大魚を掃除してあげている真の目的は、巨大魚たちが分泌する粘液を食べるためなのである。

しかし、粘液を食べ過ぎてしまうと巨大魚が泳ぎ去ってしまうため、仕方なく寄生虫を食べてあげているのだ。ペアで行動しているホンソメワケベラは、一方が粘液を食べ過ぎてしまうと、もう片方が寄生虫を食べなくてはならないため、迷惑をかける結果となってしまう。

この習慣に他者を心がけた行動が生まれるのではないかと、スイスのヌーシャテル大学の研究チームがある研究を行なった。

研究チームは、一人で掃除しているときとペアで掃除しているときにおいて、粘液を食べる率を比較した。その結果、ペアで掃除をしているには粘液を食べる割合が半分ほどに低下したのだ。これは、他者がいたために自己中心的な行動を慎んだということ。

さらに研究チームは、2匹のホンソメワケベラに餌として「エビ」と「サメ肉」を同時に与えることに。一人でいるときのホンソメワケベラは「エビ」を好むため、2匹でいるときにはどうなるのかを調べようということである。

ホンソメワケベラは、研究チームの予想通りエビを食べる頻度が減り、サメ肉を選ぶことが多くなったのだ。ホンソメワケベラに相手を協調する気持ちがあることが示唆された研究となった。

他にも、昨年に大阪市立大学が「ホンソメワケベラが鏡の中の自分を認識できる」ということも明らかにしており、ホンソメワケベラは魚の中でも知能の高い種であるのかもしれない。いや、魚自体が私たちの想像以上に賢い存在である可能性も否定できないであろう。