天井を這いつくばっていた?洞窟上部で発見された恐竜の足跡の謎がついに解明

オーストラリア・モーガン山近くの洞窟上部に残された恐竜の足跡の由来がついに特定されました。従来の説ほど派手ではないにしろ、新たな説は偶然がいかに科学発見を左右するかを示すものでした。

クイーンズランド大学のアンソニー・ロミリオ博士が明らかにしたことによると、残念ながら恐竜が洞窟の天井でコウモリさながらのダンスをしていたわけではないようです。実際には、恐竜は柔らかい粘土でできた堆積物の上を何度も歩いて足跡を残していました。こうしてできた凹みが砂で埋められ、さらなる堆積物の圧力で岩石と化すと、砂岩の方が泥岩より固くなることがあります。

時が経ち柔らかい部分が浸食で削られて洞窟となった際に足跡が岩から突き出し、これがクイーンズランド州で多く発見されているのです。

天井に残る足跡は20世紀前半にかなりの混乱をよび起こしましたが、モーガン山で足跡が発見された頃にはその生成過程はよく理解されていました。それより謎だったのは、どうのような恐竜の足跡かという点です。残された足跡のサイズは2通りで、古生物学者は当初四足歩行の肉食竜のものだと考えていました。

定型化されがちなT.レックスとは違い、肉食竜の前足は体全体と比べて小さすぎるわけでもないのですが、一方で前足が歩行に適さなかったことも事実です。 もしモーガン山の例が本当に四足歩行肉食竜の動きを示しているのだとすると大発見になりますが、ロミリオ博士は「T.レックスが前足を歩行に使ったとは考えられないのと同じで、その捕食性の先祖が2億年前に前足で歩いたとは考えにくい」と述べています。

何十年もの間、疑問が解決されることはなく洞窟も閉鎖されてしまい、答えを求めようにも新たな証拠が見出だせない中、ロミリオ博士は歯科医のロスリン・ディック女史と出会ったのです。

オーストラリアの博士課程研究奨励金はあまり潤沢ではないらしく、ロミリオ博士は市場の仕事で収入を補ったと語っています。カリフラワーやブロッコリの値段を知らせるかたわら、彼はなじみとなった客に研究の話をしました。ディック女史の父親が恐竜を見つけたことがあると聞いた時は半信半疑だったものの、彼女がクイーンズランドでは伝説の化石収集家と言われるロス・スタインズの娘だと知って博士は言葉を失ったのです。

スタインズはモーガン山の洞窟を高解像度写真で撮影した上で詳細なノートを残しており、それをディック女史の姉が階段下の食器棚にしまっていたそうです。

ロミリオ博士はスタインズの時代にはなかった技術と知識を用いてこれらの記録を分析し、「歴史生物学」誌に論文を掲載して、問題の足跡がサイズの異なる2頭の二足歩行竜によるものであることを明らかにしました。

ロミリオ博士は大きい方の恐竜が脚長1m、小さい方がその半分だったのではないかと語っています。最初についた足跡は大きい方ですが、他の足跡が直後についたかどうかは不明です。2頭はおそらく別種でしょうが、同一種の成獣と幼獣である可能性も否定できないと言います。

足跡が2億年を経ていることから、より外へ開いた形の足跡や短い中指は草食竜の特徴を示すと言えますが、2頭の食習慣や生活形態に関する詳細な情報は得られませんでした。当初の四足歩行説は、二足歩行の草食竜が進化により太い足指を持つようになったことによる混乱から生じたものだったのです。

reference:iflscience