最新のDNA分析により古代スキタイの戦士が13歳の少女と判明

古き神々、戦士と王たちの時代、ギリシャ神話には闘う女性種族の物語が描かれていました。小アジアを出身地とする獰猛な女戦士たちは神々の娘と呼ばれて何世紀もの間人々の想像力をかり立て、今もなお伝説のアマゾン戦士としてポピュラーカルチャーに浸透しています。戦う女性は長い間古代人の想像の産物と考えられていましたが、考古学上の発見によりこうした神話の題材とも考えられる女性戦士の実在が明らかとなりました。

昨年、2,500年前(紀元前4世紀)のスキタイ遊牧民と考えられる2体の女性の遺骨が発掘されました。現在のロシア西部に位置するデヴィツァ村で、馬具や鉄製ナイフ、矢尻30個などの武器と共に埋葬されていたものです。「2人の女性が騎馬戦士であったことは間違いないでしょう。」当時ロシア科学院考古学研究所の考古学者であったヴァレリー・グリャエフ氏はこう述べています。

2人は別の女性2体と共に塚から発見されました。後者のうち1体は40代で花の装飾がある金の頭部飾りをつけ、もう1体は30代前半で、2本の槍のそばに馬にまたがるような姿で埋葬されていました。グリャエフ氏は説明します。「私たち調査隊は武装した若い女性の墓をこの10年で11か所ほど発見しています。みな別々の塚に埋められ、通常男性向けの儀式も行なわれたようです。」

一方ロシアの別の研究チームは武器一式と共に木棺に入った姿で1988年に発見された2,600年前のスキタイ人の遺骨をゲノム解析しています。ロシア科学院の考古学者ヴァルヴァラ・ブソワ氏は本誌取材にこう語ります。「この子供は最初男性と考えられていました。(通常男性のものと思われる)斧や弓矢などの遺物があったからです。」しかしDNA分析の結果遺骨は女性であることが分かりました。「これによって(スキタイでは)女性が狩猟や戦闘に参加した可能性があると言えるでしょう。」

戦士の少女はシベリア、現在のトゥバ共和国で斧、樺の弓、矢が10本入った矢筒と共に埋葬されていました。矢尻の中には木、骨、青銅製のものもあります。カラマツ製の棺に密閉されていたため遺骨の一部はミイラ化していました。

「この若き『アマゾン』はまだ14歳にもなっていません。」研究リーダーを務めたロシア科学院物質文化史研究所の考古学者マリーナ・キルノフスカヤ氏はこう語ります。少女は丈の長い毛皮のコートとシャツ、それにズボンかスカートのようなものを着ていました。

走査型電子顕微鏡による観測で、コートは「ジェルボア(トビネズミ)」の皮を縫い合わせたものであることが分かりました。埋葬品の炭素年代測定から、墓所は紀元前7-5世紀、初期スキタイ時代のものと推定されています。

ブソワ氏によれば研究チームは若き少女戦士の遺骨からさらに年代を絞り込み、金属製埋葬品の成分を分析して、発見物の復元と保存に努めたいと考えています。遺骨のCTスキャンを用いることで若き女性戦士の死因解明も期待されます。この発見は「ヘロドトス(『歴史』第4巻110-118)のおかげで現代まで生き延びたアマゾン神話の時代に図らずも連れ戻される」ものだと研究チームは述べています。

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスはアマゾンがスキタイ人と戦ったと主張しますが、実際に男と並んで訓練を受け、狩猟や戦闘に加わったのはスキタイ人女性の方だったようです。

歴史家アドリエンヌ・メイヤー氏が2014年ナショナル・ジオグラフィック誌に語ったところによると、「スキタイ人女性の約3分の1が武器と一緒に埋葬され、男と同じように戦闘で傷を受けている」のです。「スキタイ人は少人数の部族で暮らすため、全員で役割を分担するのは自然なことです。皆で自衛と戦闘、狩猟に貢献する必要があったのです。」

何百年か経つうちにアマゾン神話は弓を引くために乳房を切り落とすだの男の子を殺すなどという突飛な話で飾られるようになりました。しかし今私たちは現代の考古学とDNA分析技術に支えられ、神話に隠された真の女性戦士について学ぶ機会を得たと言えるでしょう。

最新の研究結果は「Stratum Plus」に掲載されています。

reference:sciencealert



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