サルの意識の『オン・オフ』を自由自在に操ることに成功

こんなモーニングコールはいかが?科学者グループは猿の脳奥部にある微小器官に短い電気刺激を与えることにより、麻酔の深い睡眠から瞬間的に覚醒させられることを実証しました。

まるで残忍な拷問方法のようにも聞こえますが、この発見によって得られた”意識の本質”への鍵となる知見が、脳障害の治療開発を進める上で役に立つことになるかもしれません。

問題となる脳の部位は脳幹のすぐ上方に位置し、視床外側中心核として知られる一群の灰色物質です 雑誌「ニューロン」によると、ウィスコンシン-マディソン大学を中心とする研究者グループが特定の周波数を持つ電気信号でこの部位を刺激したところ、一般的な麻酔薬で眠らせたマカクザルを覚醒させられることを発見したというのです。マカクザルは数秒のうちに意識を回復し、脳の機能にも全く問題が見られなかったとのことです。ただ、電気刺激が止まると猿は再び意識を失ってしまいます。

ウィスコンシン-マディソン大学で心理・脳科学を専門とするユリ・サールマン教授はこう述べています。「脳への刺激を続けている間は、目を見開く、近くのものに手を伸ばすといった振る舞いや、生命反応の変化、身体と顔面の動き、加えて脳の活動までが覚醒時のそれと同じものでした。ところが刺激の元となる信号を切ると、数秒以内に猿は目を閉じ、無意識状態に戻ってしまいます。」

もっとも実験の手順は極めて正確でなければなりません。わずか200マイクロメートル離れた複数の特定部位に、同時に鋭いバースト上の50ヘルツ電気信号を毎秒50回与えなければならないのです。条件が満たされなければ良い結果は得られなかったとのことです。

研究者グループはこの部位を「意識エンジン」と名付けました。これを研究することにより、我々の無意識を支えている物理プロセスを理解できるのではないかと考えているのです。猿が無意識から覚醒状態へ移行する過程の脳をスキャンすることにより、視床外側中心核が大脳皮質を刺激し、さらに大脳皮質が視床外側中心核に対して覚醒を続けるよう働きかけることも分かりました。

サールマン教授は、「大脳皮質深部と視床外側中心核の間にはフィードバック・ループが存在し、ある種のエンジンのような役割を果たしている」と言います。「エンジンを働かせるとともに、意識や意識下の体験を支配する大脳皮質に変化をもたらす脳内の重要部位がここで特定されたのです。」

この知見は意識にかかわる脳障害を治療する助けとなり得ます。視床外側中心核の損傷が意識障害に関係することは以前から知られていましたが、今回の研究が示唆する通り、脳をより深く理解することによって昏睡状態や植物状態など長期間意識が回復しない患者の治療が可能となるかもしれません。

reference:iflscience