誤ってLSDを通常の550倍も過剰摂取してしまった女性の詳しい症例報告

10代の女性は通常楽しむ量の10倍のLSDを摂取しました。また、26歳の女性は同じくLSDを妊娠に気づかず過剰摂取しました。ある女性は通常の550倍ものLSDを別のドラッグと間違えて過剰摂取してしまいました。

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これらの異例とも言えるLSDの大量摂取をした人の症状が論文で詳細に掲載され、極めて大量の幻覚剤摂取の結果どうなるのかを知る手立てとなっています。

どうして科学者がそんなことを知りたいのでしょうか?近年幻覚系ドラッグを治療として使うことへの関心が高まりつつあり、多くの研究者が脳にLSDが与える影響に注目しているためです。マイクロドージングの効果を測定し、幻覚系ドラッグの歴史を医学的文献として記録しています。

この研究は進行中であるにもかかわらず、LSDのような薬物の高容量摂取の潜在的な悪影響についてはほとんど知られていませんし、もちろん科学者が人体実験できるようなものではありません。

そのため、実際に何が起こるのかを測定するには実生活における過剰摂取に関する症例の医療記録を見ることが唯一の方法なのです。その記録はカナダの研究者が集めた3つの症例をインタビューや、カルテ、症例記録、またはそれらに付随する報告をもとにした新たな論文として発表しています。

最も注目すべき症例は、46歳女性のCBさんでしょう。彼女はライム病からくる足の痛みの治療にモルヒネの投薬歴があり、コカインと間違えて55mgのLSDの粉を鼻から吸引しました。

「これは通常使用する100マイクログラムの550倍にも相当します。」とブリティッシュコロンビア大学のサイケデリック薬研究専門のマーク・ヘイデン主導で書かれた論文に記されています。

「彼女は摂取後15分以内で異変に気づき、ルームメイトに助けを求めました。」

その後12時間にわたって頻繁に嘔吐し、記憶の中では真っ直ぐに座っていましたがその間ほぼ気を失った状態でした。その後、さらに12時間の間気分が悪くもなったが『ハイになって楽しい』と感じていたそうです。

「ルームメイトからの聞き取り調査によって彼女はほぼ椅子に座って目を見開いたり、閉じたり、白目をむいた状態で、口からは泡を吹いていたそうです。そして時には何かをブツブツとしゃべったり吐いたりしていたことが明らかになりました。」と研究チームは説明しています。

「10時間後、ようやく話したりバスルームに行ったりと通常の状態に戻ったようでした。」

彼女が回復したあと、C.Bさんは足の痛みにLSDを少量摂取し、やがてモルヒネの服用を完全にやめたのですが、不安、うつ、ひきこもりを経験しました。

別の症例は15歳の女性でA.Vさんです。彼女はパーティーで通常の10倍もの量を誤って摂取しました。A.Vさんはマリファナと幻覚系ドラッグの摂取歴があり、以前にはうつ、軽躁病、双極性障害と診断されたことがあります。

過剰摂取から数時間後A.Vさんは奇行が見られ、続いて発作のような症状がありました。この一件以降A.Vさんのうつ病が改善したように見えた、と家族や医師が記録しています。

「A.Vさんの父が観察したところ、過剰摂取事件以来、彼女の精神疾患が完全に回復したようです。」と研究論文に書かれています。

「A.Vさんの報告ではLSD摂取過多の事件後、以前はアンバランスさを感じていた脳が『普通』の脳の状態を手に入れたそうです。」

3症例目である26歳の女性N.Mさんの経験は研究資料に詳細が書かれています。彼女はA.Vさんと同じパーティーに参加していてLSDを過剰摂取してしまいました。通常だと100マイクログラムのところ5倍もの量を摂取したのです。

N.Mさんは幻覚系ドラッグユーザーでしたが、この事件のときには妊娠2週目だということに気づいていませんでした。現在その子は18歳になりましたが、運良くドラッグが子供に影響することはなかったとのことです。

このような過剰摂取はいかなる状況でも誰の身にも起こるべきではないと研究者が書いている一方で、「精神疾患の改善や痛みの軽減、モルヒネの禁断症状の軽減といった予測しない効果もあるようだ。」とも書いています。

もちろん、数年前に起こったたった3つの症例だけですので、この調査結果をどう解釈するべきか慎重になる必要があります。しかしありがたいことに、これらの症例では誰にも被害はなかったようです。

論文の中では、8人のLSD過剰摂取による反応を詳細に記載した1970年代の研究結果を実証もしています。結果的には死亡者はひとりも出ず、全員回復したのです。

しかしながら、彼らが経験したことを考慮し、次のように締めくくっています。「人間がLSDを大量に摂取することで命を脅かし著しく酷い症状が見られます。」

この調査結果は Journal of Studies on Alcohol and Drugsに報告されています。

reference:sciencealert