遺伝子操作によって二酸化炭素を食べて成長する細菌の開発に成功

イスラエルの研究チームが、有機化合物の代わりに二酸化炭素を食べることでエネルギーに換える大腸菌株を作り出すことに成功しました。

この研究は11月27日付けで学術雑誌「Cell」に掲載されています。

Credit: Pixabay

「私たちの主な目的は炭素固定(植物が取り込んだ二酸化炭素を炭素化合物として留める機能)を強化し、便利で科学的なプラットフォームを作り、持続可能な食料や燃料の生産と二酸化炭素排出によって起こる地球温暖化に対応することです。」とワイツ化学研究所のシステム生物学者で論文の著者であるロン・ミロ氏は言います。

生物界は、無機質である二酸化炭素を栄養源とする”独立栄養生物”と、有機化合物を食べる”従属栄養生物”の2つに分けられます。植物などに代表される独立栄養生物は地球に食料や燃料をもたらす存在です。独立栄養生物の原理や成長をよく理解することは持続可能な社会を実現するには重要となります。

従属栄養生物を独立栄養生物に変換させることが、合成生物学の大きな課題でした。再生可能エネルギーや持続可能な食料生産に大きな関心を示しているにも関わらず、従属栄養生物が栄養源として二酸化炭素を食べるように設計するという努力は失敗に終わりました。

従属栄養生物内に自己触媒二酸化炭素固定サイクルを確立するという試みでは、安定した成長をさせるために常に他炭素有機化合物の添加が必要だったのです。

「基本的な科学観点から、細菌の栄養摂取が糖への依存から二酸化炭素へと切り替えることが可能かどうかを見たかったのです。」とワイツマン化学研究所の博士研究員で第一著書でもあるシュムエル・グレイゼル氏は話しています。「このような変換が可能かどうかの研究を通して、私たちは細菌のDNA設計図の操作にどの程度の環境変化が必要なのかを知りたかったのです。」と。

研究チームは大腸菌を独立栄養生物へと改造するために代謝の再配線や研究所の開発を行ったと言います。遺伝子操作された菌株はギ酸塩から電気化学的に生成されたエネルギーを取り込みます。

というのも、ギ酸塩は有機炭素化合物なので大腸菌の成長の元となる栄養素を作り出さず、従属栄養経路の助けとはなりません。研究チームはさらに菌株が炭素固定や炭素還元をしてギ酸塩から非天然酵素を生産するよう設計しました。しかし、大腸菌は従属栄養に適応しているため、この変化だけでは独立栄養を促すには十分ではありませんでした。

そこで、研究チームは代謝の最適化ツールとして適応実験室の開発に乗り出し他のです。従属栄養生物の成長に関わる酵素の中核を不活性化し独立栄養の摂取経路に依存するようにします。

そして従属栄養経路を阻止するため、有機炭素の源である糖キシロースの供給を制限してケモスタット培養法で細胞を培養しました。細胞の増殖開始をサポートするには、まず300日ほどのキシロース供給が必要でした。ケモスタット培養法にはギ酸塩と10%の二酸化炭素が含まれていました。

この環境には、唯一の栄養源として二酸化炭素を食べる独立栄養生物と比較して、唯一の栄養源となる二酸化炭素を食べる従属栄養生物にとって利点があります。

同位体標識という追跡システムを使うことで進化、独立した細菌が独立栄養生物、つまりキシロールや他の有機化合物ではなく二酸化炭素が本当に細胞の成長につながったことを確認できたのです。

「実験室の開発というアプローチが成功するためには細胞の動向にふさわしい方法を探さなくてはなりません。」とミロ氏は語っています。「熟考と抜け目のない設計が必要で大変な作業でした。」

独立栄養生物の細胞のゲノムとプラスミドの配列を調整することで、研究チームはケモスタット法での進化の過程でわずか11個の突然変異を発見しました。突然変異の3つの特徴に分けられます。

1つは炭素固定サイクルに関係する酵素をコード化することで遺伝子に影響を与えました。2つ目は前回の実験でも観察されたが、一般的に起こりうる突然変異の範囲で独立栄養経路とは言えないものです。3つ目は、役割がまだ知られていない遺伝子内で起きた突然変異でした。

「この研究によって初めて細菌の成長変異に成功したと言えます。腸内細菌に植物がしているトリックを教えるには長い時間がかかりましたね。」とグレイゼル氏は語ります。

「このプロジェクトを始めた当初は成功への手がかりがなく、遺伝子の劇的な変化を実現する手助けとなる前例は文献にありませんでした。そして最終的にこの遺伝子操作に必要な比較的小さな遺伝子の変化を見たことは本当に驚きでした。」

著者が言うには、炭素固定で消費される二酸化炭素よりも細菌によるギ酸塩の消費によって排出される二酸化炭素の方が多いというところで行き詰っているとのことです。産業利用の議論がされる前にさらに研究を進める必要があります。

今後研究者が目指すのは、再生可能な電気を通してエネルギーを供給することで二酸化炭素排出に対処することです。そして独立栄養を行える大気環境かを判断し、独立栄養成長に最も関連している突然変異を絞り込むことです。

「この偉業は、遺伝子操作された最近を使うことで、今まで廃棄物だったものから燃料や食料などの製品に変化させるという見通しを切り開く素晴らしい実証となります。」ミロは続けてこう話しています。「また、人類の食料生産の基礎である分子マシンと呼ばれる分子複合体を理解し改善するためのプラットフォームとなり、将来農作物の収穫量増に貢献するでしょうね。」

reference: sciencedaily