身体を改造してバイオハッキング、爆発物を匂いで探知できるサイボーグ・バッタの開発に成功

ニュータイプの爆発物探知生物の登場です。と言っても、研究室の中でのことですが、爆発物探知の目的で身体改造されたその生物とはバッタです。米国ミズーリ州にあるセントルイス・ワシントン大学の研究チームが、この昆虫の高機能な嗅覚系を活用して爆発性物質を探知できるようにバッタを「バイオハッキング」することに成功しました。

Credit:Washington University, St. Louis

俗に電子鼻と呼ばれる従来の化学物質検出機器は数十年にわたって開発されてきた歴史があり、医学や国土防衛、環境モニタリングの分野で利用されてきました。しかし、生物の嗅覚系はこれまでに工学的に造られた機器を優にしのぐ能力を備えています。そのため、バーラニー・ラマン氏が代表する研究チームが化学物質の検出方法を革新することを目的にアメリカトビバッタ(学名:Schistocerca americana 別名:アメリカイナゴ)について詳細な調査を行いました。

bioRxivで公開された、この研究チームの査読前論文は、バッタを数種類の化学蒸気に曝露させる実験について記述してます。使用した化学蒸気は爆薬であるトリニトロトルエン(TNT)と2,4-ジニトロトルエン(DNT)であり、対照群としては非爆発性の温風とベンズアルデヒド(アーモンドの風味を付ける食品添加物)が使われました。

バッタの1本の触角に約5万個存在する嗅覚受容器ニューロン(ORN)が化学臭を感知します。すると、電気信号が触角葉というバッタの脳の部位に送られます。触角葉に取り付けた電極を使うことによって、研究者たちはバッタの反応の違いを確認し、反応の仕方と化学臭の種類の相互関係を見出しました。

ORNが送り出す電気信号は増幅され、バッタが背負う小型で軽量のバックパックを経由して無線で送信されます。この化学的認識のプロセス全体がわずか数百ミリ秒という、一瞬と言って良い間に行われました。

しかしながら、実用化の妨げとなるものがいくつかありました。爆発物探知を7時間続けるとバッタは疲労して死んでしまうのです。また、バックパックを背負うことはバッタが動けなくなることを意味します。そのようなわけで、何ヶ所かの異なる場所でも爆発物探知ができるのかテストするために研究者チームは臭気の濃度が高い所から低い所へ移動する「台車」にバッタを乗せて実験を行いました。

成功したこととしては、単独で実験したすべてのバッタが単純な分類器より優れた結果を出したことが挙げられます。とは言え、60%以上の精度で化学臭を分類できたのはわずか1匹しかいませんでした。そこで、複数のバッタの実験データを組み合わせたところ、「成果に著しい改善」を見出すことに成功したのです。たった7匹のバッタのデータを組み合わせるだけで、平均精度が80%に達したのです。研究チームはこれを「昆虫の群れの知恵」と呼んでいます。

米海軍研究局から75万ドルの助成金を得て行われているこの研究により、サイボーグ・バッタを国土安全保障に役立たせることができるかもしれません。とは言っても、多数の匂いがある場合に識別する方法など、バッタが爆発物を探知する能力についてさらなる研究がまずは進められる必要があります。

reference:iflscience