7年間も同じ場所に居続けた『怠けたサンショウウオ』が発見される

欧州の洞窟の底に、「竜」の名で呼ばれたことがある中でも一番怠惰でちっぽけな生き物が住んでいます。驚くほど肌に近い色をしていることから、「人間魚」との呼び名もある動物です。

しかし短くてかわいい足を持つこの水生生物(学名Proteus anguinus)は実は両生類、空のない永遠の闇での暮らしに適応したサンショウウオの一種なのです。真洞窟性のライフスタイルのせいでその目は退化して皮膚の下に埋もれ、ダーウィンをして「古代の生命の残骸」と言わしめることとなりました。

サンショウウオの目は光の存在を感じることはできますが、他の役には立ちません。鰓を持つこの変わった生き物は基本的に盲目で、代わりに嗅覚と水中での聴覚が鋭く、水面下の動きを検知する能力に長けています。

2010年〜2018年にかけて研究者のグループがボスニア・ヘルツェゴビナ東部の洞窟に住むサンショウウオを捕獲し、タグをつけて追跡しました。出会いの頻度から判断して26匹の成体サンショウウオが生息し、8年にわたる記録の結果、その動き回る範囲はかなり限定されることが明らかとなりました。

エオトボス・ロランド大学の動物学者であるゲルゲリイ・バラズス氏とその同僚が発表したところでは、「再捕獲した個体の多くは数年間で10m以下の移動に留まっていた」とのことです。

中でも1つの個体は抜きんでて怠惰でした。最初の記録から何と2,569日たった後に、全く同じ場所で発見されたのです。これは7年以上の年月です!ところがサンショウウオの生物学的性質に、この一見信じがたい芸当を解明する鍵が隠されていました。

Credit:Javier Ábalos Alvarez/Flickr/CC BY SA 2.0

怠け者のサンショウウオは100年にも及ぶ寿命をそなえています。体重20グラム、体長30センチメートルにも満たない小ぶりな生き物にしては驚くべき芸当で、明らかに何らかの最適化が行なわれているのでしょう。

バラズス氏はNew Scientist、「彼らはほとんど何もせず過ごす」と述べています。

これこそが彼らの長寿の秘訣かもしれません。サンショウウオが二千万年前に洞窟を支配してから、基本的に最小限度のことしか行わないという彼らの戦略はとてもうまく機能しているのです。

サンショウウオがこれほどまでに怠惰の頂点を極められるのは、彼らの代謝が極めて低いおかげです。彼らは(洞窟にそう多くもない)カタツムリや甲殻類を食べていますが、何年もの間餌なしで生き延びることもできます。

洞窟に彼らを捕食する者がいないことも、どこにころがっていても安全というカウチポテト生活の助けとなっています。

これに加えて彼らは約12年に1度しか交配しません。そしてその時になると、見た目も素晴らしい35個前後の卵の塊を産みます。

とは言っても、彼らは動けないというわけでもないのです。サンショウウオの中には身をくねらせて何十メートルも泳ぎ、研究者の手を逃れるものもいます。 またタグをつけた個体が目を離した間にさまよい歩き、こっそりとお気に入りの場所に戻ったのだと言えなくもありません。

Credit:Arne Hodalič/Wikimedia Commons/CC BY-SA 3.0

しかしブラズス氏たちはサンショウウオ集団の遺伝子多様性が極めて小さいことをつきとめ、このことから個体数が比較的最近に縮小したか、あるいは高いレベルで近親交配が起きた可能性を考えています。特に後者はほとんど移動しない習性を示唆するものです。また住み家を変えるのは若い個体に限られるとした過去の研究もあります。

遺伝子多様性の欠如はスロベニアのサンショウウオには見られず、直近に研究した群れの信じられない程スローペースのライフスタイルが同種の個体にあてはまるかどうかを知るにはさらなる研究が必要です。

「推測になるが食物供給量が非常に小さいところで生き、生殖行動が散発的で100年生きるような動物はエネルギー消費に対して非常に慎重で、体の動きを最小化しようとするのではないか」と研究者たちは記しています。

アラバマ大学の生物学者マシュー・ニーマイラー氏はこの研究には関与していませんが、Science Newsに賛同の意見を掲げています。

「もしもあなたがサンショウウオでこの・・・食物に乏しい環境を生き延び、家や縄張りを作る絶好の地を見つけたとしたら、そこを離れようとするだろうか?」

このスピーディーでストレスの多い世界では、ことによると私たちも皆サンショウウオのようになることを願うべきなのかもしれません。

reference:sciencealert