約1000年前に地球の空から月が消えた原因がついに分かるかもしれない

2020.05.08
auther vaience
約1000年前に地球の空から月が消えた原因がついに分かるかもしれない

およそ1,000年前、地球の大気に変革が起こりました。硫黄を多く含んだ巨大な雲が成層圏全体に流れ込み、数ヶ月から数年間も空を暗くし、最終的に地上にまで降りてきました。

Credit:Pexel

研究者たちは、火山噴火によって成層圏に届いて再び地球表面に降りてきた硫黄エアロゾルが閉じ込められた氷床コアのサンプルを採掘し分析した結果、月が消えたことがわかっています。

氷は驚くほど長い期間火山作用の形跡を保存できますが、いつ起こったのかを氷床コアの層から特定することは一筋縄ではいきません。

この場合、科学者たちは『地獄への入口』と称されることもあるアイスランドのヘクラ山で1104年に硫黄鉱床が起きたと仮定しています。その薄い氷の層は前千年紀最大の硫黄堆積のあったところに位置しているため、そのように仮定したようです。

一般的に使われている氷床コアの年表がもしタイムワープしていたとわかったとしたら?数年前、グリーンランド氷床年表2005(GIC05)と呼ばれるタイムスケールが最初の千年紀で最大7年、次の千年紀で最大4年ずれていることがある研究によって結論づけられました

スイス・ジュネーヴ大学古気候学者のセバスチャン・ギュエが率いる新たな研究によって、これらの発見は結局ヘクラ山が巨大な硫黄を放出した犯人ではないということが示唆していることがわかりました。

「この氷床コア年表の改訂から、主要な今まで認識されていなかった硫黄沈着を伴う双極火山の活動が1108年後半か109年初頭に始まり1113年初頭まで続いたことがグリーンランドの記録からわかりました。」とギュエ氏と共著者たちは論文の中で説明をし、同様に改訂された南極氷床コア年表にも同じことが起きていた形跡があることに注目しています。

世界の上と下の両端で古代の形跡を残した原因について、研究チームは歴史文献をくまなく調査し、主要な噴火による大気中のもやと一致する中世の暗く奇妙な月食の記録を探しました。

「高高度な火山エアロゾルに関連した光学現象は古くから年代記著者の注目をあつめてきました。」と研究チームは記しています

「特に、報告されている月食の明るさは、成層圏内の火山エアロゾルを検出し、大規模噴火後の成層圏の光学的深さを測定するために採用できるでしょう。」

天文学的な計算をもとにしたNASAの記録によると、前千年紀の最初の20年、つまり1100年から1120年にヨーロッパでは7つの月食が観測されたと思われます。

その中で1110年の5月に観測された月食は現象が起こっている間の月は真っ暗だったと記録されています。

「5月の5日目の夕方に月は輝いていたが、その後徐々に光は消え始めたのですぐに夜が訪れました。完全に消えてしまい光も球体も何もかも見えなくなりました。」とピーターバラ年代記観測者が記録しています。

多くの天文学者がこのミステリアスで奇妙な暗い月食について議論を重ねてきました。起きてから数世紀後に、イギリスの天文学者ジョージ・フレデリック・チャンバーズ氏がそのことについて、「これが銅のように輝く代わりに見えなくなってしまった『黒い』月食の事例です。」と書き記しています。

天文学史でよく知られている出来事あり、原因である可能性が最も高いにもかかわらず、研究者たちは成層圏の火山エアロゾルの存在が原因だと提唱したことはありませんでした、と新たな論文で述べられています。

「私たちは火山灰のベール以外の証拠、例えば太陽の減光、赤い夕焼け、そして赤みを帯びた太陽の光輪などが調査対象の1108年から1110年の間には見られなかったことに注目しています。」と研究者たちは書いています

発生時期から見て、火山が硫黄の雲を発生させたのがヘクラ山でないとしたら、どの火山が原因となったのでしょう?

それを確かめることは不可能ですが、研究チームは最も可能性の高いのは1108年に数ヶ月にわたって巨大噴火をした日本の浅間山ではないかと考えています。その後1783年に1,400人以上が犠牲となった噴火よりもかなり大きいものだったのです。

ある政治家が1108年の出来事を記録した日記に、「火山の頂上から火が上り、庭には灰が厚く積もり、田畑は被害に遭って栽培することができなくなった。この国でこんなことは初めてだ。とても不思議で珍しいことだ。」とありました。

目撃証言に加えて、研究者たちは木の年輪を調べたところ、1109年は非常に寒い年(北半球では1度低い)だったことが年輪の間隔が明らかに狭いことからわかりました。

他の歴史文献資料では、特に1109年から1111年にかけての気候や社会への影響いついての文献は、1108年の噴火(またその年からはじまった一連の噴火)が影響下にあったコミュニティーに甚大な影響があったという仮説を裏付けています。

「これらの年に悪天候や作物の不作、飢饉が起こったことについての膨大な証言」を研究者たちは発見しました。

もちろん、かなり昔の苦境から特定の噴火活動を証明することはできませんが、研究者たちは、全ての集めた証拠から1108年から1110年にかけて人類に恐ろしい結果をもたらすこととなった『忘れ去られた』火山噴火のクラスターについて知ることができます。私たちはそれを再発見しているだけにすぎません。

この調査結果は Scientific Reports.に報告されたものです。

reference:sciencealert

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