古典的な錯視絵にだまされてしまう理由が研究によって明らかに

100年以上も科学者を寄せ付けない謎があります-グラデーションがかかった背景に描かれたまったく同じ色の図形が違って見えるのか?上の画像をちょっと見てみてください、2つの円は実は同じ色なのです。

Credit:MIT

私たちの色や形の知覚は背景によって変わり、このプロセスを同時彩度コントラストといいます。ある形が明るい背景に描かれている時よりも暗い背景に描かれている方が明るいと認識します。

この視覚効果は数世紀にわたって芸術家が探求してきたもので、少なくとも1800年代にはコントラスにある状況で色合いをどのように認識するのか体系的に調査されていました。しかしこの謎はいまだ解明されていません。

視覚をだましている原因はいったいどこにあるのでしょうか?目が私たちを騙しているのでしょうか?それとも脳がなまけているのでしょうか?

目の錯覚は高度な映像処理によって起こると考える科学者がいます。私たちの脳は照明や環境を考慮して目が何を検知しているかを解釈しているというのです。

しかし、視覚の誤作動に関して新たに一連の研究を行ったところ、別の説が浮上しました。研究者たちは27名の有志の大学院生に微妙に異なる画像を見てもらうことを含め、特別に設計した視覚テストを実施しました。

私たちが見て解釈しているのは認識した色合いによるのか、実際の発光(輝度)の度合いによるものなのかをテストするために、研究チームは以下のような絵を被験者に見せました。

「実際には輝度が高い側面が暗く見え、もう一方の側面はその逆に見える絵を作りました。」と研究チームは論文に記しています。

これが実際に見てもらった絵です。

Credit:Sinha et al., Vision Research, 2020

「ここでは暗い背景に描かれた丸は明るい背景に描かれた丸よりも明るく見えるという通常の同時コントラストとは逆のことが起きています。」マサチューセッツ工科大学の計算論理的神経学者、ポワン・シンハ氏は説明しています

普段は意識していませんが、輝度は明るさを見積もることで認識しますので、高度な思考過程はコントラストによって判断する必要がないのです。

視覚情報が脳に伝わる前の視覚処理過程の早い段階で私たちは明るさを見積もっていることを研究チームは突き止めました。

「私たちの実験によってこれがローレベル現象であると結論づけました。」とシンハ氏は話しています。「これは先天的に備わっている視覚システムのようなものです。」

最初の2つの研究を検証するために白内障手術後に初めて目が見えるようになった8歳から17歳までの子供にこの錯視絵を見せました。

「もし明るさの見積もりが先天的なものなら、先天性の盲目の子供が初めて視力を得た時に同時コントラストの錯視絵にだまされるはずだと予測しました。」とシンハ氏は説明しました

予測した通り、手術後包帯を外してから24~48時間後の子供たちは、過去に見た経験もなく視覚も未発達であるにも関わらず錯視絵に騙されることとなりました。

今回の結論は他の輝度に関する研究と一致していますが、研究チームにはまだ説明がつかないことが課題として残っている、とシンハ氏は指摘をしています。つまり脳の他のプロセスも後のステージで関係してくるだろうということを意味しています。とはいえ、コントラストの見積もりは視覚経路の初期段階で行われ、先天性のメカニズムであることを確信しています。

「高度な推論に帰する現象の多くは、実は先天的に備わっているとてもシンプルな回路メカニズムに裏付けられている可能性があります。」とシンハ氏は締めくくっています

この研究論文は Vision Researchに掲載されたものです。

reference:sciencealert



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