皆さんは、日々の生活に満足しているだろうか。
毎日のように、電車に揺られながら本当は行きたくもない学校や会社へと足を運んでいる。つまらない人生だと自分自身で感じてはいるものの、特に何の行動もすることができていない人は「学習性無力感」の状態にあるかもしれない。
学習性無力感は、1967年にセリグマンとマイヤーが犬に対して条件付けを用いて行った研究によって提唱された。また別の1967年に発表された論文での実験の内容は以下のようである。
犬を以下の3つの群に分け、オペラント条件付けに従って、電撃回避学習を課した。
第一統制群の、自分では電撃を停止できない犬は、回避行動をとらず、電撃を受け続けた。こうした実験によって、ある物事に伴って起こらないような刺激が与えられる環境によって、何をやっても無駄だ、統制不能だという認知を形成した場合に、学習に基づく無力感が生じるとし、学習性無力感が提唱されたのである。
同様に、動物実験用ラットを試験管内に密閉すると、最初は抵抗の意思を見せるものの数時間後には全く動かなくなる。これもまた、学習性無力感である。
そして、この学習性無力感の状況下に多くの現代人がさらされている。自分が行きたくもない学校や会社、さらには大変厳しい家庭状況や軍隊のような部活。そういった試験管に閉じ込められている人が大勢存在するのである。
学習性無力感の状況が最大まで進めば、どんな可能性さえも「無駄な努力」と断じ、自発的行動を全くしなくなる。今の状況を抜け出そうという気さえもおこらないため、非常に抜け出すことは難しい。
セリグマンらは、学習性無力感における「反応しても無駄であるという信念」を変える方法に認知行動療法を挙げている。人間で効果が確認されている方法は、自尊心を回復したり、行動随伴性を示したり、失敗は別の理由で起こったと説明し励ましたりすることであるそうだ。
とはいえ、日常生活に疑問を持ち、すぐに対処することで学習性無力感の状況に陥らないことが最も大切なことなのかもしれない。