実験室で培養された脳から、脳波とみられる電気的活動が検出された。脳波は、人間のものに似ていたとのこと。人間の大脳皮質の発達に関する根本的理解への道を開くものだという。
米カルフォルニア大学サンディエゴ校の生物学研究者を筆頭とした研究チームによって作成された研究論文は、医学誌「セル・プレス」に8月29日付けで掲載された。
培養されたミニ脳に意識があるかどうかは明らかになっていない。検出された脳波が、早産児の脳にみられるパターンに似ていたため、意識はないと考えられている。
豆粒大の小さな脳細胞は、成体幹細胞から作られたオルガノイドで、3次元的に試験管内でつくられたミニチュア臓器である。
成体幹細胞から作られる「脳オルガノイド」が登場してから、およそ10年が経つが、機能的な神経ネットワークを発達させたのは初の事例となる。
論文によると、今回の成功の要因は「培地製法の最適化などを含む幹細胞培養過程の技術向上」と、「神経細胞発達のための十分な時間を与えたこと」であるという。
研究チームは、約2ヶ月が経った頃にオルガノイドから脳波を検出したそうだ。初めはまばらなもので同じ周波数であったが、成長するにつれて複数の周波数へと変わり、定期的に信号が検出されるようになったとのこと。
そして、研究チームは早産児39人から記録した脳波活動を用いて訓練した”機械学習アルゴリズム”で、脳オルガノイドがペトリ皿の中で発達した期間についての予測を正確に行うことに成功。
これにより、脳オルガノイドが実際の脳と同様の成長軌跡をたどることが示された。てんかんや自閉症などの神経学的な疾患をモデル化する際に役立つことが考えられる。
研究チームは、一つ問題点があるという。それは、脳オルガノイドの発達が約9〜10ヶ月で止まってしまうことだ。
内部へ栄養物を供給する血管などの機能がないためや、感覚的な刺激の欠如などが推測されているものの、未だ原因は明らかとなっていない。
今後研究が進み、脳オルガノイドが人間の脳に近づくことで倫理的な問題が浮上し、こういった研究が困難な状況になると考えられている。
reference: thejapantimes, sciencealert