今回は科学系YouTubeチャンネル「Kurzgesagt」が核兵器が現代の大都市で爆発した場合に実際に起こりうることを解説したアニメーションを紹介します。これから紹介するのは核戦争ではなく、たった一回の核爆発で起きることです。
話は大都市の繁華街から始まります。人々は仕事や学校に行くなど、自分の考えや日常生活をに集中しています。そんな中、突然核爆発が起こったとしましょう。
爆発の最初の段階は1秒も経たない間に起こります。1000分の1秒の間に太陽よりも熱いプラズマ球が現れて、直径2キロ以上の大きさにまで成長します。
この火球の中では、すべてのものが消え失せます。例えるなら、とても熱いフライパンの上に水を入れるとジューっという音のあと何もなくなってしまうかのようにほとんどの建物や車、木々、そして人間が跡形もなく蒸発します。
閃光はまるで光の津波のように都市を一瞬にして包み込みます。もしあなたが爆心地の方角を向いていたならば、あなたは数時間に渡って目が見えなくなることでしょう。
この閃光から生まれる熱は高エネルギーで高温な熱パルスを生成し、爆心地から半径13キロ圏内のものすべてを焼き尽くします。
別の言い方をすれば500平方キロにもなる範囲内の可燃物がすべて燃え始めます。プラスチック、木、布、髪、そして肌。もしあなたが熱パルス到達範囲圏内にいたならば、学校に向かう平凡な格好から一瞬のうちに火だるまになっているでしょう。
そしてそこから数秒の間で次の段階が起こります。ほとんどの人々は何かが起こったことに気づきますがもはやこの時点で数十万人が手遅れの状態となっています。
閃光の後には衝撃波がやって来るのです。火球の熱と放射能によって超高温•超高圧の空気が生成され、それが音速より速く、台風、竜巻よりも強い風を吹かせながら爆発的に膨張するのです。
我々が造り上げた建造物はこれほどの力に耐えるようにはできていません。火球から1キロ圏内のほとんどの建物は基礎となる部分のみを残して崩壊します。鉄筋コンクリートの建造物の一部分が残るのみです。
公園ではほんの1秒前に黒焦げになった木々が、爪ようじのように簡単に折れていきます。もしあなたがこの時屋外にいたならば、竜巻の中の米粒のように吹き飛ばされます。
衝撃波は爆心地から遠くに行くにつれて弱まりはしますが、それでも175平方キロの家々が紙切れでできていたかのように崩壊し、そして数万もの人々がなすすべもなくその下敷きになってしまいます。
そして、燃え残りやチリ、灰が巻き上げられてできたキノコ雲が数分のうちに数kmにもおよぶ高さになり廃墟となった街に影を落とします。
しかし、このキノコ雲の本当の脅威は都市の周辺から空気を吸引することです。これによりさらに多くの建物が破壊され大量の酸素を爆心地にもたらします。
ここから起こることは都市の状況によって変わります。もし燃料が十分にあったなら火災はやがて火災旋風にまで成長しガレキやそれに閉じ込められた人々、そして逃げ惑う人々を焼き尽くします。
21キロの範囲内では、人々が珍しい瞬間をSNSにアップしようとキノコ雲の写真を撮ろうと窓に押しかけるでしょう。その後にくる衝撃波によって、窓が粉々に砕かれてできた鋭いガラスのブリザードがやってくることを知らずに。
第3段階はそこから数時間、あるいは数日の間です。私たちはこのような災害時にでも助けが来ると思いがちです。しかし、この際は状況が他の災害とは全く異なります。核爆発はすべての自然災害が一度に襲ってきたようなものだからです。
数百万もの人々が怪我や骨折、深刻なやけどなどの重傷を負っています。数時間の間に数千人か、それ以上の人々がこれらの外傷によって亡くなります。数え切れないほどの人々が倒壊した建物の下敷きになったり閃光によって一時的に失明したり、衝撃波によって耳が聞こえなくなったり、道をふさぐガレキによって逃げられなくなったりします。
これらの人々は恐怖しパニックになります。何が、どう起こったのかも理解していないでしょう。多くの病院も他の建物と同じように崩壊し、ほとんどの医療従事者も他の人々と同じように亡くなったり重傷を負っています。
幸運にして地下などの安全な場所にいたことで、無傷の人もまだ脅威から完全に逃れたわけではありません。核兵器の種類や爆発した場所、天気などにもよりますが、しだいに放射性のチリや灰を含んだ黒い雨が降り出して都市の全てを包み込みます。
放射線の目に見えない静かな恐怖が人々を襲うのです。息をするたびに生存者の肺は毒に侵されていきます。極めて高い放射線にさらされた人々が数日のうちに死んでいきます。
救助も来ません。それも数時間どころではなく、もしかしたら数日以上。このように何もかもが崩壊した状況では現代のシステムは全く動作しません。道路は封鎖され、線路はぐちゃぐちゃに、滑走路にはガレキが散らばっています。
水も電気も通信も食料を調達する店もありません。近くの都市からの救助も災害地域に入ることは困難です。もし入れたとしても放射能汚染により近づきすぎると危険です。
核攻撃のあとは、頼れるのは自分のみです。そのため、徐々にですが人々はその放射性降下物にまみれた足で残されたわずかなものを持ってガレキの山を脱出します。
身体にも心にも傷を抱えた彼らは、まず食料や水、そして救急処置を必要とします。核兵器のダメージは火の手が収まり煙が晴れたら終わりではありません。
周辺の都市の病院は災害のため設備不足となり重傷を負った数万数十万もの患者で溢れかえります。年月が経つにつれてこれらの生き延びた人々も多くは白血病などのガンに倒れることになります。
どこの国もこのような事態を想像して欲しいと思いません。なぜなら、核爆発を扱えるだけの人道的な責任が欠けているからです。核攻撃による犠牲者を真の意味ですぐに救う方法はありません。
これは台風でも、山火事でも、地震でも、原子力事故でもありません。これらはすべて一度に起こる最悪の出来事です。この事態に備えることのできている国は存在しません。
ここ数年で世界は変化しました。世界のリーダーたちは核兵器によって互いに他国を脅しています。多くの専門家は核攻撃の危険性はここ数十年の中で最も高い状況にあることを認識しています。
政府は自らが核兵器を所有することは良いことだと言いますが他国が所有することは悪いことだと主張します。自らを守るために他の人々を大量破壊兵器で脅すことは必要だと言いますが、しかし本当にこれで安全になったのでしょうか?
狂った人々や暴力的な人々のほんの小さな集団、小さなミスや単なる勘違いですら想像もつかない大惨事の蓋を開けるためには十分です。動画の中で爆発させることは楽しいことかもしれませんが、現実の世界では全く楽しいことではありません。
しかし、できることはあります。すべての核兵器を廃止し今後二度と作らないと約束することです。2017年には世界の3分の2近い国々が赤十字•赤新月運動を含む数百もの市民活動団体の活動を受けて核兵器を削減•禁止することに賛成しました。
これはどの国が核兵器を持つ、持たないの話ではありません。核兵器それ自体が問題なのです。核兵器は非常に非人道的で存在すること自体が私たちすべてに対する脅威です。
あなたが住んでいる国や政治的立場に関係なく私たちは核兵器が永遠に存在しないことを求めなければなりません。このことは一人一人の行動がなければ達成できないのです。