遺伝子組換え作物である「ゴールデンライス」は、その使用が規制されていなければこれまでに数百万人もの死を防げたと考えられている。そして、各国ではゴールデンライスの承認が進み始めているという。
遺伝子組み換え生物(GMO)をめぐっては、動植物のDNA撹乱材料になる危険性があるとして現在も環境保護主義者と論争になっています。
それでも多くの科学者達は、GMO食品が世界中の栄養失調を解消するのに役に立つと信じており、中でも「ゴールデンライス」として知られる作物は、その使用が規制されていなければこれまでに数百万人もの死を防げたであろうと考えられています。
多くの発展途上国では白米を主食としていますが、これにはいくつかの重要な微量栄養素が不足しています。その結果、5歳未満の子供達の3人に1人が失明や免疫力の低下を引き起こすビタミンA欠乏症(VAD)に苦しんでいるとされています。
世界保健機関(WHO)によると、毎年最大で50万人もの子供達がVADで視力を失い、さらにその半数は失明した後の12ヶ月以内に死亡しているという。
2000年に細胞生物学者のピーター・ベイヤーとインゴ・ポトライカスが、彼らが作り出した「ゴールデンライス」の詳細を発表し、当時はこれによって世界的な栄養失調に対する解決策が見つかったように思われていました。
この白米が遺伝子組み換えされた「ゴールデンライス」は、体内でビタミンAを製造するのに使うβカロチンと呼ばれるオレンジ色の色素を生成するのに適しています。
しかしその20年後、世界中でゴールデンライスに対する規制が行われ、ゴールデンライスによってたくさんの人の命が救われる可能性が消え失せたのです。科学ジャーナリストのエド・レジスは、その著書でゴールデンライスの歴史を年代順に記録し、その道程における障壁を検証しています。
グリーンピースなどのごく一般市民の反対運動により全ての遺伝子組み換え作物に対する疑念が助長されてきましたが、レジスによると最大の障壁は「バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書」と呼ばれる国際条約だったとのこと。
2003年に可決されたこの条約は、遺伝子操作した作物がどのような害を及ぼすか証拠が全く無いのにもかかわらず、ゴールデンライスの開発、実験、流通を多かれ少なかれ不可能にする規制の波の根源となったのです。
レジスは、この規制こそが過去20年間にわたり数百万人もの子供達の視力を奪い、命さえも奪った元凶だと断言しますが、その流れも変わろうとしています。
2018年、ゴールデンライスは、ついに米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで承認されました。これによりゴールデンライスが最も必要とされる多くの発展途上国も追随する道が開かれたと言えます。
発展途上国であるバングラデシュを例に上げると、11月15日にゴールデンライスの使用について認可するかどうか決議することになっています。
ゴールデンライスによって、世界中の栄養失調に苦しむ人々が救われる未来がまもなくやってくる可能性は高いでしょう。
reference: IFLscience