AR(拡張現実)搭載コンタクトレンズ。SF作家が何十年も前に構想したことを現実のものにするべく、数々のスタートアップは10年以上もの間、開発に取り組んできました。
そしてMojo Vision社がそれを成し遂げたことを発表したのです。1インチあたり14Kピクセルのマイクロディスプレイ、ワイヤレス受信器、イメージセンサー、モーションセンサーをコンタクトレンズに搭載し、違和感なく目に装着出来るようにしたと言います。
次世代以降はバッテリー搭載を予定していますが、Mojoレンズの第1世代はワイヤレス電力伝送式です。電源供給に加え、センサーデータを処理し、ディスプレイに情報を送信する小さな外部パックがあります。開発企業はこの技術をinvisible computing(見えないコンピューティング)と称し、人々の目をスマホから離すことができると説明します。
商品開発とマーケティングに関わったシニアヴァイスプレジデントのスティーヴ・シンクレアー氏はこの製品は弱視の人向けだと発表しています。リアルタイムにエッジ検出(特徴抽出)をし、物の周りにはっきりと文字を映し出します。先週開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー2020の実演で、試作品を試した方(といっても目にいれたわけではなくレンズを通して見た)によると、そのデバイスで薄暗い部屋を見渡すと明るい緑色ではっきりと形状を強調されたと言います。
効果は見事なものとのことで、人間の顔の特徴さえも強調されるそう。しかし、過度に強調されるのではなく、表情が笑顔なのか真顔なのかがわかる程度です。Majo Vision社は、将来的には視覚補助のためズーム機能を加えることを計画しています。そして追加アプリケーション開発のため視覚障害者センターとの提携を発表しました。
弱視の人向けの製品という枠を超えて、同時通訳や顔のタグ付け、感情の読み取りなどといった潜在的な将来性があります。
Mojo Vision社はレンズにアイトラッキング技術(視覚追跡)はまだ導入していませんが、まもなく導入し、装着することで外部デバイスなしでもアプリを操作出来るようになるとコメントしています。
「装着していることがわからないように目だけを使って操作出来るようにしたいのです。」とシンクレアー氏は話しています。
シンクレアー氏が言うには、メガネとは全く異なる体験ができるそうです。「目を閉じてもディスプレイ画面を見ることが出来るのです。」と言っています。
コンタクトレンズは医療機器とみなされ、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認が必要ですので実用化は簡単な道のりではありません。しかしMajoレンズは承認が早められるFDAブレイクスルー機器(画期的デバイス)に指定されたため、すでに臨床試験が始まっています。
同社は研究のための潤沢な資金が提供されています。カリフォルニア、サラトガに拠点を置くMajo社は現在までに84人の従業員を抱え、コースラ・ベンチャーズ社のような従来のベンチャー企業の他LGやGoogleのような巨大企業などから1億500万ドルの出資を集めました。さらにその技術は100以上の特許を取得ししっかり守られていることをプレスリリースで発表しています。
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