ロンドンの地下鉄では毎日500万もの乗客がひしめき合いますが、その中にネズミの数は含まれていません。
ロンドン交通局によれば、市の推計で50万匹ものネズミが地下のトンネルや駅を住み家にしているとのことです。彼らはぬくもりとシェルター、そして通勤客が毎日のように線路に落とす食べカスを求めて集まります。英国で活躍する写真家サム・ローリーの偉大な(今や受賞作でもある)写真が示す通り、旨いものが落ちていればあとは「勝手に逃げろネズミ人生」というわけです。
地下鉄のプラットホームで2匹のネズミがひとかけらの食べ物をめぐって取っ組み合う姿をとらえたローリー氏の写真「駅でのいさかい」は、ロンドン自然史博物館が主催する今年の野生動物写真家コンテストでこのほど一般投票選賞を受賞しました。
この劇的な一瞬をとらえるためローリー氏は1週間にわたって毎晩何か所も地下鉄のプラットホームをまわり、カメラを抱えて文字通り地に伏しながら、同じ目の高さで餌をあさるネズミを待ち続けました。写真がとらえたのは一匹のネズミがライバルの手から餌を奪って逃げだす前のほんの一瞬だったとローリー氏は述べています。しかしその瞬間、大いなる舞踏が繰り広げられていたのです。
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ロンドン自然史博物館長マイケル・ディクソン卿は、「彼がとらえた映像で野生動物が人間優位の環境の中いかに生き延びているかを見事に垣間見ることができます。人間の毎日の行動ルーチンや移動手段、そして食物を捨てることによってネズミの行動が形作られているのです。」と述べています。
ネズミ同士の餌の取り合いは珍しいものではなく、まして資源に乏しい野生の生活ではなおさらのことです。ロンドンをはじめ世界中の地下鉄でネズミは人間の出すゴミを頼りに生きており、このようなネズミ同士の死闘は列車を待つ間にも思いもかけない頻度で起きていると考えられます。それを目にしたければ飛び込んで泥にまみれるのを厭わないことです。
reference:livescience