世界56か国で8万3千人以上の人々がコロナウイルスに感染しています。WHOはウイルスの世界的リスク評価レベルを「高」から「非常に高」へ引き上げました。既に何千人もの人が死亡し、主要産業もウイルスの影響で混乱に陥っています。コロナウイルスが最初に発生した中国では人々の恐怖心と政府の検疫で外出が控えられ、主要都市の中心部はゴーストタウン化しています。
コロナウイルスのような伝染病が広がる時にも平常時の感覚で生きる方法はないものでしょうか?中国の建築家であるスン・ダヨン氏はおそらくあると考えています。ペンダ社の創始者である彼は、伝染病の流行時に大量展開可能なウェアラブル・シールドのコンセプトを生み出しました。
「バットマン化スーツ」と呼ばれるこのシステムは自然界と人工環境の両方から着想を得ています。サン氏はコウモリがコロナウイルスの流行源らしいのに、コウモリ自体はウイルスの攻撃に免疫を持つ点に着目しました。コウモリの体は飛ぶ時に熱くなるため、発病時の高熱に頼らずとも自然な活動によってウイルスに対抗できるのです。
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対コロナウイルス・シールドとして、スン氏はコウモリの持つ軽い翼に似た軽量システムを構築しました。使用者はカーボンファイバー製フレームのバックパックを身に付けます。そしてまるでジェット機のコックピットか独り用バブルのようなポリ塩化ビニール(PVC)製フィルムで体を覆うことになります。
建築学の体系では建造物を「第三の皮膚」と考えることがあります。(一番目は皮膚そのもの、二番目は服。)スン氏はPVCのシールドをウェアラブルな建造物ととらえ、体をめがけてやってくるウイルスとの間の物理的なバリアーにしているのです。さらなる防御のため、プラスチック表面は紫外ランプで殺菌されます。
このスーツに気密性はありませんが、最善の伝染病対策ルールに従っています。眼と口は一番感染の入口となりやすいため、実際の危険物取扱用スーツも正面を重視し、後ろより前を防御することが多いのです。
コロナウイルスがどうやって伝染するのかまだ明らかではありませんが、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)はヒト-ヒト感染、つまり互いの体や同じ物を触った後で眼や口に触れることによるものと考えています。感染者と同じ空気を呼吸するだけでうつるわけではありません。気密性こそないものの、バットマン化スーツなら最低限手をいつも自分の乗り物内に置くことができるのです。
長期的な目標として、スン氏はPVCにフルARインターフェースを持たせて「各種用途向け小型モバイルスペース」とする可能性を考えています。それはおそらく持ち運べる小型オフィスユニットのようなものになりそうです。
しかし彼のデザインが直近で注目に値するのは、それが完全に製造可能であるという点です。カーボンファイバーもPVCも希少な材料ではなく、いずれも大変軽くて肩で支えても気になることはありません。つまりスン氏は都会通勤者のための危険物取扱用スーツ、いわばコウモリの能力を与えてくれるバックパックを概念化したのです。(ただ飛行やソナーの能力はないですが。)
このスーツの製品化に興味があれば、スン氏はデザインと助言を無償で提供するとのことです。
reference:fastcompany