中国は今一日2億枚ペースでマスクを作っています。これは2月のはじめの製造量の20倍以上の数です。新型コロナウイルスのアウトブレイクがマスク製造の量産に拍車をかけたのです。マスクには医療関係者が使う防御力の高いN95マスクと、一般の人がコロナウイルスから身を守ることを期待して使う普通のマスクがあります。
それでも世界中からの注文はおろか、国内の需要に応えられるには程遠いのです。そのため、中国では増産を行っています。
マスク製造工場は「110%で稼働している」と当局は話しています。そして靴やiPhoneや車を製造していた工場はマスクを製造するために改装されています。おむつやナプキンなどを作るための繊維製造機は今ではマスクの原料を作っているとのことです。
「マスク製造は皆さんが想像しているほど簡単ではありません。耳かけ、金属片、梱包材を製造する必要があります。非常に大きなシステムが入り組んでいます。」と中国北東部の製薬会社Shengjingtongの会長、Guan Xunze氏は電話でナショナル・パブリック・ラジオに話しています。彼は鼻に沿って曲げるための金属部について触れました。
Shengjingtong社は政府の要請を受けてマスク製造『軍』に移行した数千ある企業のうちの一つです。政府からの支援を受けて、Guan氏は製薬工場に元々あった無菌室に中古のマスク製造機を導入しました。導入から11日で1日のN95マスク製造量は1万枚を超え、現在ではその数が20万枚となっています。
中華人民共和国国家発展改革委員会によると、現在中国で製造するマスク2億枚のうち医療関係者が使用するN95基準のマスクはたったの60万枚です。中国の規制当局は医療従事者の使用基準を満たすものを含むトップグレードのマスクを製造可能な工場に新たに多数の開業許可を出してきました。
しかしこの野心的な努力が供給不足を生むボトルネックとなったのです。
医療関係者用と消費者購入用のマスクにはかつては知られていなかったメルトブローと呼ばれる繊維が必要です。これは合成ポリマーの繊維でできた非常に細かい網目状になっていて、呼吸をしながら感染粒子の流入を減らすマスクの重要なフィルターとなります。
「私たちは直径が1ミクロン以下の繊維について話をしていますので、ナノ領域の世界にいるのです。」とドイツのメルトブロー繊維製造機械ラインの主な提供会社、Reicofil社のセールスディレクター、マーカス・ミュラー氏は話しています。
【関連記事】コロナウイルスの最年少患者はなんと生後30時間の赤ちゃん
そして、現在マスクの需要が高まったことでメルトブローが世界的に不足しているのです。これがマスクの原材料製造の難しさなのです。
1機4億5千万円もするこの機械は溶かしたプラスチックの原料を綿あめのように繊維状に吹き出し、平らなメルトブローのシートを作り、マスクや濾過製品にします。スパンボンド繊維という医療関係者が身に付けるマスクや医療用防護服を製造できる類似した機械ラインもあります。
これらの機械は厳格な精度が求められるため製造が難しい、とミュラー氏は語り、「このような繊維は熱風で伸ばす必要があり、熱風は機械の幅全域にわたって完璧な状態に保たなくてはいけません。最大のジレンマはこの機械の中には一貫したクオリティーで製造できないものも多いことです。」
Reicofil社のミュラー氏は、おもに中国からメルトブロー繊維や生産ラインを購入したいという依頼が一日に40件以上あるがすべて断らなくてはならないと話しています。1代の機械ライン製造に少なくとも5~6ヶ月もかかるからです。
中国不織布繊維産業協会によると、中国企業は年間300トンほどの不織布繊維を製造しているそうです。そのうちメルトブロー繊維は1%に満たないのです。
メルトブロー不足を補うために、今月石油、石油化学工業企業であるSinopec社が2億元出資をし、子会社であるYanshan Petrochemical社が供給する製造ラインと合わせて新規に10のメルトブロー製造ラインを始めることを中国は発表しています。
フロリダにあるヒルズ社の事業開発マネージャー、ティモシー・ロブソン氏はその製造ラインの品質に疑問を抱いていて、医療スタッフが着用するマスクの製造には厳格な基準を満たす必要があると考えています。ヒルズ社は機械用にハンドドリルで開けられたダイチップを製造出来る世界有数の会社です。溶かしたプラスチックはこのチップを通して噴出されるのです。
「この機械はトースターとはわけが違います。普通に買ってコンセントに差し込めるものではありません。これは産業プロセスなのです。」とロブソン氏はナショナル・パブリック・ラジオの電話インタビューに答えました。「中国はどんな場所もあり得ます。ときには西洋の工場にいるかの様に、またときには掘っ立て小屋の汚い床のようなところもあります。多分後者かもしれません。」
中国のエンジニアリング会社は苦戦しているそうです。「機械を製造するのに6ヶ月かかり、組立にさらに1ヶ月を要します。」とアメリカやドイツ、日本から輸入したメルトブロー製造ライン機械を組立てているHaigong Machinery社のセールスディレクター、リオ・リュー氏は言います。「皆さんマスク製造の過程をよく理解していません。機械のコストについて知ったら諦めるでしょう。」
Yanshan petrochemical社は、10台のメルトブロー製造ラインの組立に6ヶ月もかかりません、16日で十分です、と話しています。
ウイルスのアウトブレイクの初期からマスクの供給不足は起こりました。地方政府が中国の他の地域に配送予定のマスクを押収したほど状況はひどいのです。
他の地方政府は国にマスク製造への切り替えを管轄の企業に要請をしています。
「上海当局から私たちの工場ラインを医薬品製造に切り替える提案があったあと、羽毛布団製造ラインのうちの10のラインを防護服製造へと変更しました。」と民間の寝具会社の会長であるリー・ライビン氏は中国の報道機関に話しています。「製造工程の改造に数日かかり、リー氏の会社は防護服の製造にまず取り掛かり、1日の製造量はおよそ2000着と報告されています。」
長春市北西地域の下着工場はもう少し長く、8日間かかりました。2月の初めに許可が下りてから、凍ったパイプを修理し、遅延した原材料の配送を探してようやく1日3,000枚のマスク生産を開始しました。「アウトブレイクのあと、私たちの会社は可能な限り早く製造できるようにラインを調整しました。」と工場長は共産党の記者に説明しました。
しかしメルトブロー製造ラインのボトルネックはその繊維自体の深刻な不足を意味し、価格を高騰させているのです。
「アウトブレイクする前は、中国でのメルトブロー繊維1トンの価格は6,000ドル以下でした。しかし現在は60,000ドルに高騰しています。」と中国のウイルスのアウトブレイク中心地である湖北省に拠点を置くメルトブロー供給しているXuzhong Guohong社の営業担当のGuoさんは話しています。「この問題は本当に深刻です。なぜこれほど価格が釣り上がるのでしょう?」
Guoさんは中国からの注文は依然として受けていますが、韓国や日本からの需要もコロナウイルス蔓延とともに増加しています。
Guan Xunzeha氏は幸運なことに、製薬会社の会長は原材料が当局から供給されるので原材料の価格高騰に直接関係ないのです。
「私たちのメルトブロー繊維と不織布の供給はすべて地元の地方政府が調整します。もともとマスク製造をはじめたときは従業員が30人でした…地方政府がさらに180人を派遣してきました。」
それでも利益を上げることは『とても難しい』とGuan氏は話しています。
reference:npr