初期の人間が技術を身に付けるはるか前からネアンデルタール人は繊維から糸や縄を作っていたということが明らかとなりました。
研究者たちは41,000年~52,000年ほど前の6.2mmの繊維の破片を発見。これは今まで最古と言われてきたイスラエルで発見された19,000年前のものよりもはるかに古いものです。
今回のものは当時ネアンデルタール人の居住地であったフランスの洞窟内で発見されました。このことから、ネアンデルタール人は私たちが考えているよりもものづくりに長けていたことがうかがえます。
「技術を会得しねじった繊維を使うということは複雑な技術が使えるだけでなく、対や集合、数といった数学的な理解もしていたと考えられます。」と研究者たちは論文に記述しています。
「近年発見された炭や芸術、貝殻ビーズなどといった形跡に今回の糸も加わり、ネアンデルタール人は現代人よりも認知能力が劣っていたという考えはますます受け入れがたいものとなっています。」
糸片の発見後、研究者たちは分光法や顕微顕微鏡検査などの技術を使い分析したところ、その繊維の元がわかりました。おそらく球果植物のような花をつけない木の樹皮の内側が硬くなる前のものだろうということが分かりました。
研究チームは、私たちはネアンデルタール人のことをよく理解していない、なぜなら今回発見した繊維などは腐敗しやすく年月とともに消えてしまいます。道具や骨などが唯一の手がかりなのだ、と話しています。
古代のヒト科の動物が本当に糸を作ることができたとしたら、繊維を取る木の発育や季節性を分かっていたはずで、数学を駆使して繊維をねじって束にして糸を紡いでいたはずです。
つまり、繊維や糸を作ることはあなたが思っているよりも複雑な作業なのです。研究者たちは発見した糸片は石器の持ち手部分に貼り付けられたもの、もしくは道具を入れるネットやバッグの一部だったかもしれません。
そしてこれはただの糸ではないのです。このような糸を作ることができれば、布地やカゴ、マット、そしてボートを作るのはそう無理なことではありません。繰り返しになりますが、ネアンデルタール人や彼らの社会は私たちが考えている以上に洗練されていたと推論できます。
中にはこの発見に対し、繊維は原始人が残したものという証拠に強く警鐘をならす専門家もいます。ネアンデルタール人が想像よりも賢かったという証拠には程遠く、彼らがこのように工芸品を作ったという証拠にもならないというのです。
「糸や縄を作るという認知能力は言語を作ることにとてもよく似ています。」とケニオン大学人類学者のブルース・ハーディー氏はGizmodoの記者ジョージ・デゥヴォールスキのインタビューにこたえています。「これはネアンデルタール人認知能力の可能性を物語っています。」
この研究は Scientific Reportsに掲載されています。
reference:sciencealert