トキソプラズマ症を引き起こす原因となるトキソプラズマという『マインドコントロール』してしまう寄生虫がハワイのオアフ島で初めて発見されました。
この寄生虫は以前にはハワイの島々では知られていなかったのですがどうしてオアフ島に上陸したのでしょうか?寄生虫を保有していることで知られている外来種の野良ネコをヒッチハイクしてきたようなのです。
しかし、公平な目で見るとネコが悪いわけではありません、最初に島に持ち込んだのも、野放しにしたのも人間なのです。持ち込まれたネコは捨てられ、野放しにされ野性化したのです。こういったネコのコミュニティーのせいで今在来動物が有害で死に至る可能性のある寄生虫の危険にさらされている、と科学者らは新たな研究論文に書いています。
トキソプラズマはネコが寄生虫をオーシストというカプセル状の卵の状態で糞に排出することでネコから人間を含むほかの動物にも寄生します。トキソプラズマオーシストが新たな媒体へと入り込むとタキゾイトという活発に増殖する形態へと姿を変えます。タキゾイトは素早く複製されるため、媒体の免疫システムを攻撃して深刻な健康被害を引き起こします。
トキソプラズマのマウスやラットへの影響の1つに、脳内化学物質の分泌を調整して行動を変化させるというものがあります。げっ歯類は一般的にネコを避けますが、トキソプラズマの『マインドコントロール』によって逆にネコに近づいていくのです。それはまさにトキソプラズマの戦略であり、感染したラットを食べたネコが感染することでトキソプラズマのライフサイクルが達成されるわけです。
そしてネコの在来動物への影響はマインドコントロールする寄生虫だけにとどまりません。このネコは効率的かつ死を招く捕食者でもあるのです。ハワイ外来種評議会(HISC)によると、アメリカだけでネコは年間240万羽の鳥を殺しているそうです。島固有の33種の動物の絶滅の一因となり、世界的に絶滅の危機に瀕している爬虫類、鳥類、哺乳類の8%に対し脅威を与えているというのです。
研究者たちはオアフ島の在来種の鳥が生息する公園や公用地32ヶ所で野生のネコの群れとトキソプラズマの痕跡を調査しました。在来種の鳥が多く生息する場所の近くに
25のネコの群れを確認しました。各群れのネコの数は確かではありませんが平均して23匹程のネコが各地で確認されました。ほとんどの群れでは人間がネコに餌をあげているという証拠がみうけられたのです。
さらに科学者たちは4つの群れから56の糞のサンプルを集めました。4分の3の群れでトキソプラズマの排出が確認され、テストしたサンプルの10%にトキソプラズマ陽性反応が出たのです。
「糞サンプルからトキソプラズマ陽性反応の出る割合の高さから、オアフ島のネコが島全体の公園や近隣の寄生虫の温床となっていると言えるでしょう。」と共著者のアメリカ合衆国鳥類保護協会の外来種プログラムディレクター、グラント・サイズモア氏は声明を発表しています。
「特に心配しているのは、頑丈なオーシストが環境を転々と移動し陸上や淡水、海水の恒温動物に感染する可能性があるということなのです。」と彼は話します。
糞のサンプルを集めたのがたった4ヶ所でしたが、おそらくトキソプラズマはオアフ島、ひょっとしたらほかの島にも広がっていて、弱い在来種の大きな脅威となっているかもしれません、と論文著者は報告しています。
「私たちの調査結果は最小値であるとみなすべきで、オアフ島でのトキソプラズマ発生は実際もっと数値が高いでしょう。」と書かれています。
この調査結果は4月9日に Conservation Science and Practiceに掲載されています。
reference:livescience