機械学習は、アルゴリズムという処理手順によって課題を実行する手法ですが、動作のためのプログラミングを人がするのではなく、入力されたデータをアルゴリズム自体が使うのが特徴です。ただ、このようなアルゴリズムを構築し、「訓練する」には時間がかかり、また、人の偏見が深く入り込んでしまうことがよくあるというのが問題視されてきました。
そのような限界を超え、機械学習をさらに革新するために研究者たちはAutoML(オートエムエル 自動化された機械学習)の分野を探索しています。AutoMLは人による調査時間ではなく、機械計算の時間を利用して機械学習の工程が徐々に自動化されるシステムです。
これまで、手順の一部が自動化されることはありましたが、人の手による入力を実質的にゼロにする技術の指標となるものは依然として実現していません。しかし、この度、グーグルの科学者チームが、ゼロから機械学習アルゴリズムを見つけ出す技術の開発にある程度「予備的に成功」しました。このことは「当分野の有望な新しい方向性」を示しています。
グーグルのコンピュータ科学者、クォック・レ氏の率いる研究チームが査読前原稿の保存・公開サイトであるarXiv(アーカイヴ)で公表した論文によると、自然淘汰のようなダーウィン的進化から発想した構想を用いて、機械学習のアルゴリズムを世代ごとに向上させることに成功しました。基本的な数学演算と研究チームが作成したAutoML-Zeroというプログラムを組み合わせることで、100のユニークなアルゴリズムを生成し、画像認識などの単純なタスクをさせる実験が行われました。
このAutoMLはその性能を人が設計したアルゴリズムと比較した後、最良のものを残して、それより劣る候補を削除し、コード中の小さな「突然変異」を取り入れました。そのような性能のいくつかは多くの標準的な機械学習の技術に匹敵することがわかりました。標準的な機械学習技術のひとつは神経回路網(意思決定のために人間の脳細胞が連携して働く方法を大まかに模倣するコンピュータ・プログラムの1種)です。
この成功は研究チームの構想を裏づけるものとなるとレ氏はサイエンス誌の記事で語っています。また、工程の機能を高めることで、人間の研究者が決して見つけることのできないと思われる、はるかに複雑な人工知能をゆくゆくは作れるようになることをレ氏は期待しています。
「我々の目標はAutoMLがさらに進化する可能性を示すことです。今日では、基礎的要素として基本的な数学演算を使うだけで機械学習アルゴリズム一式を自動的に発見することが可能です」という研究チームの主張が論文に述べられています。(論文は現在、査読待ち中)
「空の成分関数からスタートして、基本的な数学演算のみを使い、様々なタスク実行法を進化させました。タスクは線形リグレッサー、神経回路網、勾配降下、相乗交互作用、加重の平均化、正規化された勾配などです」論文には続けて、こう書かれてあります。「これらの実験結果はこの手法が将来有望であることを示していますが、まだ研究すべきことは多々あります」
reference:iflscience