ネバダ州ラスベガスに住む機械技師のトラヴィス・カラスコ(29)さんは色鉛筆での塗り絵や、リーダーシップ本や緑色が好きな、どこからどう見ても彼はいたって普通の人です。
ですが、カラスコさんが若い頃に頭を前後に振る奇妙な行動をすることに彼の親戚が気づきました。カラスコさんは鳥肌を立てていると言ったのですが、親戚たちはそれを信じていませんでした。
非公式の推定では、およそ1,500人に1人の割合でVGP(自発的立毛)と呼ばれる意識的に鳥肌を立てる能力があるようです。奇妙なことに、VGPは本来存在するはずがないのです。この現象は無意識の神経系の動作が従来までの認識に反していることから神経生理学者を困惑させると同時に興味をそそりました。
哺乳類の毛包は小さな筋肉を通して皮膚から出ています。この筋肉によって毛が立ち周辺の皮膚がでこぼこに歪むことで、鳥肌の出来上がりです。
統計的には1499の人たちとって、鳥肌は全くの無意識に起こるものです。立毛筋と呼ばれるこの小さな筋肉は平滑筋繊維でできています。消化や血流、呼吸などを司る平滑筋は無意識的に調整されています。平滑筋につながる神経は自律神経系であり、心拍数や瞳孔拡張など意識的にコントロールしてはならない身体機能の管理に特化した神経系なのです。
ノースイースタン大学の生理学者であるジェームズ・ヘザーズ氏が医学史上たった3例しかないVGPに関する工学論文を見たときとても信じられませんでした。
「これはとても興味がそそられる」とヘザーズ氏はMental Flossに話す彼の声は興奮していました。「[VGP]はありえない、自律神経系の機能にはないものです、自律神経の自律とは『無意識で』という意味ですから。」
ヘザーズ氏はデータサイエンスや患者中心の電子医学開発に取り組むヘザーズ氏は副研究として鳥肌に取り組みました。2018年にpeerJ誌に論文を執筆し、VGPの割合とその性質の定義を試みました。
意識して鳥肌を立てるときに何を考えるのか?どんな状況で鳥肌を立てるのか?VGPを持った人の性格に共通点はあるのか?彼はどのように鳥肌を立てるのか正確に知りたかったのです。
ヘザーズ氏は曖昧なネット掲示板をふるいにかけて調査をし、VGPを持つ32人の参加者に標準化された性格テストをして評価しました。回答したVGPを持つ参加者は平均的な人に比べはるかに『オープン』な性格であることがわかりました。
「彼らはクリエイティブなようです。想像力が豊かなのです。」とヘザー氏は語っています。「自分自身により注意を払い、自分の感情に寄り添います。新しいもの好きで…だから興味本位でインターネット上の調査に答えることにもオープンなのです。自分自身のことを知りたいとか、またはこの経験自体をしたいと思うからでしょう。」
きっとあなたはこう思っているでしょう。いや、ちょっと待て、黒板を爪でひっかくのを想像しただけで自分にだって意識的に鳥肌立てられるぞ、と。ヘザーズ氏ははっきりと言えます。それはVGPではありません。
「VGPには精神的、認知的な要素はありません」とヘザーズ氏は言います。「鳥肌を意識的に立てられると私たちが定義する人たちは、単純な経路を持っているのです。ほとんど場合、彼らは耳や首、頭のうしろに意識を集中します。何かを考える必要はないのです。」
言い換えれば、VGPを持つ人は鳥肌を立てることだけを考えることを必要とし、一般のみんなさんが鳥肌を立てるような状況は必要ないのです。
「基本的には首の付け根、頭の下部と背中から始まります」とVGPを持つ機械技師のカラスコさんはMental Flossに話してくれました。「いったん始まると、火花がたくさん体中を走るのを感じます。繰り返し何度も何度も何度もできます。でも一番強い感覚は最初の数回だけです。」
意識的に立てた鳥肌は無意識に立つ鳥肌に比べ強いのですが、カラスコさんは頭を前後に振ることで強さを最大化させることができるというのです。
「ちょっとおかしなリズムなのですが、首を揺らすことで強く反応が出ます。」とカラスコさんは話しています。「目をギュッと閉じると時々圧力が高まって実際に筋肉が耳や目で圧迫されるのがわかりますよね。それと似ていますが、[鳥肌]が立つときはその圧力を感じますが…ただしリラックスして心地いいのです。」
カラスコさんはこれをシックスセンスだと思っているようです。ほかにVGPを持つ人に会ったことはないそうですが、彼の19ヶ月になる息子が頭を随分揺らしていることに気づきました。カラスコさんは「自分と同じ能力があるのか?と思わずにはいられません。」
おそらく遺伝でしょう、しかし科学者にもわかりません。どんな理由であれ、彼がこの隠れた能力を週に30~40回発揮するする姿を見たら、あなたは鳥肌を立てることでしょう。
reference:mentalfross