近年うつ病などのメンタルヘルス問題を解決する幻覚剤の潜在能力について研究が進んでいますが、意識状態に変化を及ぼす物質の奇妙な効果に関してはこれ迄注意が払われていませんでした。この空白を埋める新たな研究結果が Journal of Humanistic Psychologyに掲載され、その中には幻覚剤の使用に伴って起こりがちな「異常体験」の種類が記述されています。そしてそれは予想通り異様な内容でした。
異常体験は「普通の体験や、西洋の主流科学で通常受け入れられる事実の説明とは異なる」事象と定義され、幻覚剤の使用者にとっては比較的見慣れた領分と思われます。次元を超える窓とかパラノーマル・アクティビティーを想像すればほぼ当たっているでしょう。
研究リーダーのデイヴィッド・ルーク氏はサイケデリック体験に関する既存の科学文献をあたった後、彼の言う「トランスパーソナル(超個人)」あるいは「超心理学」に属するさまざまな事象を特定、カテゴライズしました。
まず事例中で自然法則に反する程度が少ないと思われるものから着手し、LSD使用者の最大57%が共感覚を経験、異なる感覚が混合して音を「見」たり色を「聴い」たことを示しました。特に多かったのはグラフィーム(書記素)色彩間共感覚と呼ばれる現象ですが、これはある種の文字や数字が色の感覚を引き起こすものです。
さらに体験リストに沿って研究を進めていくと、ルーク氏が「次元外知覚」と呼ぶ現象にたどり着きました。私たちの通常感覚が届かない領域に存在する幾何学的形状があり、それが幻覚剤の精神拡張効果によって突然姿を現わすというものです。
身体離脱体験は「自己あるいは意識の中心が物理的な身体の外に存在するとの知覚」であると定義され、一般幻覚剤使用者の44%、アヤワスカ(アマゾンで用いられる幻覚剤)使用者の62%が経験していました。同様に「死、再生、前世記憶」の感覚を含む臨死体験については5-MeO-DMTと呼ばれる物質を使用した人間の約3分の1が経験したと報告されています。この物質はコロラド川に生息するヒキガエルの分泌物から得られるものです。
サイケデリック体験の段階が上がってくると、宇宙人による誘拐のレベルにまで達します。奇妙な乗り物に乗せられ、地球外生命に突つき回されるものの、たいていはテレパシーで意思疎通できるといった類のものです。この体験がどれほどの割合で起こるか示すデータはありませんが、リストに載る程度には一般的だと思われます。
またアヤワスカ使用者と、シロシビン含有キノコ(マジックマッシュルーム)を食べた人の70%ほどが人間以外とのコミュニケーション体験について述べ、自分が摂取した幻覚作用のある植物や、その他人間以外の生物と通じることができたとしています。ルーク氏は言います。「人が幻覚剤の影響下で自然と対話する時には予想にたがわず、自然生息地を広範囲に破壊する人類を非難するエコロジー的なメッセージを受け取ることが多いのです。」
最後になりますが、幻覚剤使用者の19%から40%は何らかの形の「神がかり」経験を持つと考えられます。その形態は霊の乗り移りから一時的な透視能力までさまざまです。
この研究はこうした異常体験を説明し、その妥当性や信頼性を判断するためのものではありません。むしろ幻覚剤が引き起こす多種多様な効果に対して極端に異様な警告を提示することにより、精神を変えてしまうこうした物質に対して私たちがいかに無知であるのかを示そうとしているのです。
reference:iflscience