年齢とともに多くの人が感じることのひとつに視力の衰えがあります。しかし Journals of Gerontologyに掲載の新たな研究によって、この問題にはとてもシンプルで簡単な解決策があることがわかったのです。1日たった3分間赤いライトを見つめただけで、年配の実験参加者の視力が驚くほど改善することができたのです。
人間の網膜にはそれぞれの形からかん体とすい体と呼ばれる2種類の光受容細胞があります。かん体は網膜境界付近にあり、暗いところでの周辺視野に関係しており、一方すい体は色覚に関係しています。
どちらの細胞もエネルギー需要が高く、ミトコンドリアによって生成されるアデノシン三リン酸(ATP)という化合物によって活性化されます。しかし、40歳頃からミトコンドリアの機能が低下し始めるので、つまりかん体とすい体に利用できるエネルギーが少なくなるため視力が衰え始めるのです。
650~1,000ナノメートルに及ぶ長波長の赤い光はミトコンドリアのパフォーマンスを向上させることが以前に発見されていたことから、論文著者はこの光が年配の人たちの視力回復に利用できるかどうか調査することにしたのです。
この研究を行うために、研究チームは眼病を持っていない28~72歳の24人のボランティアを募集しました。1日目、参加者たちはかん体とすい体の機能がどのくらいかを調べるテストを受けました。
参加者は暗闇の中でかすかな光のシグナルを感知するテストによってかん体の感度を調べました。すい体の機能は背景とよく似た色で書かれた文字を識別する作業を含むカラーコントラストテストによって測定しました。
次に参加者たちは670ナノメートルの波長の赤い光を放つLEDのトーチが与えられ、1日3分間見ることを2週間続けるように指示されました。まぶたは赤い光を通すので、目を閉じて見ても構わないそうです。
調査期間の最後に再び視力検査をしたところ、40歳以上の参加者たちのすい体の機能がかなり向上しており平均で22%も視力が上がり、特に色覚の向上は青色のスペクトラムにおいて顕著でした。このことから、この色の範囲は特にミトコンドリアの衰退によって影響を受けやすいと推測できます。
かん体の機能向上も見られましたが僅かなものでした。おそらくかん体はエネルギー需
要が満たされなくなると死に、ほとんどの人は70歳までにかん体の30%が失われてしまうためでしょう。しかし、実は機能することをやめているだけで死んだわけではないので赤い光の治療によってこれらの細胞の機能を回復したのです。
論文著者のグレン・ジェフリー氏は声明の中でこの研究結果について「年齢に伴う視力の低下は衰えた網膜細胞のエネルギーシステムを光波長に当てることでリチャージされ、ちょうどバッテリーの充電のように大幅に改善することが可能であることを示しています。」と述べています。この技術は安価に作成できます。つまり実用化は遠い未来ではありません。「私たちの治療機器は1,600円程度で作れますのでこの技術は一般の方にも手が出やすいはずです。」とジェフリー博士は話しています。
reference:iflscience