3Dプリンタの意味がようやく分かった人にとってはかなり奇怪な出来事に違いありません。ミネソタ大学の科学者チームが3Dプリント技術を使ってセンサーを生きた肺に取り付けるという、医用工学上のパイオニアとなる偉業を成し遂げたのです。
研究チームはハリウッドのモーションキャプチャ技術をそっくり応用しており、将来この新技術がCovid-19など症状の現れにくい病気で患者の心臓や肺をモニターする役に立つことを期待しています。その研究成果はサイエンス・アドバンス誌に掲載されました。
実物をプリントで作る技術は目新しいものではありませんが、今回は伸び縮みして形を変える臓器にセンサーを直接プリントする初の試みです。この発明はミネソタ大学で2年前に発案された新世代3Dプリント技術を応用したものです。
同じチームは以前にも動く手の皮膚上で3Dプリントを実現していますが、今回はその技術を発展させて肺や心臓といった臓器の動きを捉えています。この技術により、膨張・収縮する臓器をマッピングしてその表面へセンサーを取り付けることに成功しました。
ミネソタ大学で機械工学を専攻し、今回の上級研究者であるマイケル・マカルパイン教授は声明でこう述べています。「私たちは1年前には想像もつかなかった手法で3Dプリントの適用領域を拡大しました。動く物体への3Dプリントは難しいのですが、伸び縮みで変形する表面へのプリント方法を見出すことはなおさら困難な課題だったと言えます。」
装置製作にあたってはまず変形する土台への3Dプリントが持つ問題を確認するため、風船に似た表面でテストを行ないました。映画の特殊効果で演者が装着するようなモーションキャプチャ用マーカーを使うことにより、プリンタは表面の動きを考慮しながら印刷ルートを計算することができます。
風船で成功を収めた後は豚の肺を使い、人工的に膨らませることで呼吸を再現しました。この結果「呼吸する」肺の表面へハイドロゲルで作られたセンサーを印刷することに成功したのです。マカルパイン教授は将来この技術によって動く心臓に3Dプリントセンサーを装着できると言います。
研究チームは将来この手法により肺、心臓その他の臓器にセンサーを取り付け、患者のモニターや治療を改善できるものと期待しています。 マカルパイン教授は声明でこうも述べています。「この研究の先にある考え方として、3Dプリント技術を医療ロボットと組み合わせる目標への大きな前進だということがあります。将来3Dプリントは単なる印刷技術に留まらず、より広い自立ロボットシステムの一部となるでしょう。これはCovid-19など医療従事者が患者を診る際にリスクを生じる病気の場合、大変重要な事なのです。」
reference:iflscience