1969年、アメリカのアポロ計画によって人類は初めて地球から約38万キロメートル離れた月に足を踏み入れました。しかし、アポロ計画による6度の着陸で計12人が月面を歩いたものの、1972年のアポロ17号以降、人類は月に足を踏み入れていません。
もし人間が宇宙ステーションで生活しているように月で生活すると、どんな暮らしになるでしょうか。月面の低重力を楽しみ、夜空に浮かぶ地球を眺めながら宇宙のロマンに浸る自分を想像してください。
とても夢のある生活に思えます。ただ、月での生活はまったくこんなふうではないのです。では、実際にはどのようなものなのでしょうか。
今回は月に移住するとどうなるのかについてご紹介したいと思います。
では、どのくらいの期間、月で暮らしましょうか。無事に月に着いたとして、まずは基地を建てることに頭を悩ませなくてはなりません。
月の上で最も連続的に一定量の日光が当たる場所は南極のため、専門家は南極に住むことを勧めています。月の南極周辺には広大な氷原があり、氷を採取することが可能です。
幸い、基地建設にはロボットを利用できます。さまざまな方法でロボットたちは役立ってくれることでしょう。
ロボットができることのひとつは、月の砂をブロック状に切り出してドームのような様式の建物を構築することです。もし、こういったことができれば、月面に基地を造るためにすべての材料を地球から持って来る必要がなくなるため、月への移住がずっと安くできるようになるでしょう。
だからと言って、基地が華々しいものになるという期待はしないでください。太陽放射から人体を守るために深さ数メートルの地下に造られることになります。
それから、食料に関して。どんなものを食べることになるのでしょうか。そうですね、実際に宇宙飛行士が食べているようなフリーズドライの標準的な宇宙食です。喜ばしいことにニンジンやトマトの栽培は可能であることがわかっています。2014年にオランダで行われた調査によると、月ソイルを利用することができるということです。では、飲み物はどうでしょうか。
残念ながら、月では飲むことのできる水は手に入りません。とはいえ、地球から輸送するには重量が大き過ぎるため、飲み物の大半は自分の尿を再生処理したものとなります。さらに、真剣に憂慮すべきこととして月の砂ぼこり「月の塵」の問題があります。
月の塵は磁気を帯びているため、どこへでも入り込みます。宇宙服にも付きますし、皮膚にさえくっつきます。月へ行った宇宙飛行士のなかにはアレルギー反応が出た人もいるほど。また、月の塵はやや鋭くとがっているため、誤って少しでも吸い込んでしまった場合には厄介な問題となります。
月の塵について心配しなくてはいけないのは人間だけではありません。機械の中に入り、オーバーヒートを起こす可能性もあるのです。
これは月に定住する前に解決しなくてはならない重大問題です。こういった諸問題があることから、ひとつの疑問が浮かんできます。あなたは本当に月に住む最初の人間になりたいですか?
生存するだけでも苦労の多い状況で採掘に明け暮れ、微小重力の環境で駆け回ることを楽しむ時間すらないだろうと思われます。ですから、月よりも遥かに地球に近い環境を持つ火星に住むべきなのかもしれません。その日が来るまでもう少し待つとしましょう。