動物が地震を「予知」する話は紀元前373年に遡り、ギリシアの歴史家ツキディデスによればヘリケーの街を壊滅的な地震が襲う数日前にネズミ、蛇、犬、イタチが逃げ出したとされています。
また現代でも地震の数時間前、あるいは数日前に動物の奇妙な行動が見られたとの逸話が聞かれます。多くの話は科学的な精査に耐えるようなものではありませんが、そのような中、ある国際研究チームが家畜を地震早期警戒システムに使うための調査を試みました。
チームは実験に際し、地震が多い北イタリアの地域に着目します。そこで「第六感」があると言われる牛6頭、羊5匹、そして2匹の犬にセンサーを付け、数か月にわたってその動きを記録しました。
よくある話だと普段と違う動物の行動が曖昧に取り上げられ、原因として他の要素が考えられることも多いのです。そこで観察結果に完璧を期すため研究チ-ムは異常な行動を客観的かつ統計的な判断基準に沿って記録し、また地震の前後に限らず全ての行動を見る事にしました。
研究内容は「動物行動学:行動生物学国際ジャーナル」に掲載されていますが、ドイツにあるマックス・プランク動物行動研究所のマーティン・ヴィケルスキ所長は共同研究者として声明の中で次のように述べています。「この方法によって私たちは相関関係を遡及的に確立しただけでなく、予想に用い得るモデルを実際に手にすることができました。」
センサーによって得られた動物の活動データから、ヴィケルスキ氏らのチームは普段と異なる行動パターンが地震の最大20時間前から起きていたことを見出しました。実際動物が震源地に近いほど早くから不安行動が発生しており、検証対象となった仮説の信憑性は増しています。
ヴィケルスキ氏は言います。「地震直前の物理的変化は震源地において最も頻繁で、遠ざかるにつれて弱くなることから、これ(動物の行動)はまさに予想通りの現象です。」但しこのパターンは家畜をグループ全体として見た場合にしか現れず、「個体での判断は簡単ではない」とのことです。
<<写真>>この地域では調査中18,000件の地震があり、うち12件がマグニチュード4を超えた。
地震が起きる時間と場所を正確に予知することはできませんが、理由の一つとして地震に先立ち地面から必ず発生する信号を発見できていないことが挙げられます。同様に、動物に検知能力があるように見えたとしてもその理由はまだ明らかになっていません。
一説には地震地帯の岩石圧力上昇による空気のイオン化に動物の毛皮が反応するのだとされますが、他には地震前に水晶の結晶が放出する気体を動物が嗅ぎ取るとの説もあります。
はっきりとした答えがない中で動物が地震を「予知」できるとするのは飛躍が過ぎるでしょう。しかし研究チームは世界中の地震地帯で対象とする動物の種類を広げ、より長い期間観察することによって「地震早期警戒システム」を作れるのではないかと考えています。
実際彼らは最初の家畜グループを用いてシステムを試作し、動物の活発な行動が45分以上続いた場合にはアラームを発するようにしました。ある時このシステムからアラームが出て「3時間後に小規模の地震が発生」したと、ヴィケルスキ氏は記しています。「震源地は動物のいる納屋の真下にあったのです。」
動物の「第六感」が真に「脚」光を浴びるかどうかどうかは、時が解決してくれるでしょう。
reference:iflscience