アルコール依存性の薬を服用している男性が手指消毒剤に対して奇妙な反応が起きたという新たな症例が発表されました。
Alcohol and Alcoholismの7月号に掲載の報告書によると、43歳のその男性は銀行を訪れた際にアレルギー反応のようなものを経験したのです。急に真っ赤になり吐き気と不安に襲われました。彼が銀行に到着しコロナ対策のため銀行のルールに従って消毒剤を手に付けたところ症状が出始めたそうです。
心拍数(脈)が早くなり、胸や顔が真っ赤になったため彼はすぐに救急治療室へ駆け込みました。
彼は3年間ジスルフィラムというアルコール中毒の薬を服用していました。この薬はアルコールを摂取するとすぐに赤み、頭痛、吐き気、嘔吐、心拍数上昇といった二日酔いのような症状を引き起こします。この不快な副作用は通常1時間ほど続き、飲酒を阻止します。彼が言うには3年間禁酒をしていたそうなのです。
ジスルフィラムはアルデヒド脱水素酵素をブロックすることで二日酔いの症状を引き起こすアルコール分解生成物であるセトアルデヒドを体内から除去する働きがあります。
ですから、ジスルフィラムを投薬中にアルコールにさらされることでアセトアルデヒドが蓄積されます。この治療薬はアルコール依存症の治療薬として50年以上前に承認されていて、Medscapeによれば米国では200,000人の患者がこの薬を常用しているそうです。
メイヨークリニックによると、ほんの少量のアルコールにさらされるだけで副作用を引き起こすことがあるため、ジスルフィラムを服用する患者はソースや酢、咳止め薬、マウスウォッシュといったアルコールの入った製品を使わない、またはペンキの溶剤、ニスなどから発生するアルコールを含む気体を吸わないように警告されているそうです。米国精神疾患保護団体によると手指消毒剤は通常アルコール濃度60~70%もあるので避けなければいけないそうです。
米国薬物乱用・精神衛生管理庁によると、この男性の場合、医師らがジスルフィラムによるアルコールへの反応だと診断し、抗ヒスタミン薬とともにジスルフィラムによるアルコール反応治療をサポートするといわれるビタミンC注射投与をしたそうです。
この男性の症状は1時間ほどで回復し病院から解放されたのですが、消毒剤かジスルフィラムのどちらかを止めるように警告を受けたことが報告されています。この論文の著者でインド、ナミビアのティラック・ミュニシパル・医科大学のアヴィナッシュ・ド・スーザ博士はこの男性の担当精神科医で、男性と相談した結果「現在消毒剤は避けられないので、ジスルフィラムの方をしばらくの間やめることを決めた」とド・スーザ氏は報告書に記述しています。
Alcohol and Alcoholismの7月号にも掲載された最近の研究では、皮膚から吸収するよりも、気化したアルコールを吸引することによってアルコールが血流に届きやすいだろうと示唆しています。
reference:livescience