土星に落ちた者の末路…

赤い惑星である火星と巨大なガス惑星である木星の向こう側に太陽系の惑星として誰もが知る、あの天体が浮かんでいます。

そうです。立派な輪っかを持つ星「土星」です。

土星は太陽系で2番目に大きな惑星です。木星と同じく、大気の大部分が水素とヘリウムによって構成されています。

この40年ほどの間に土星探査は何度か行われており、最近ではカッシーニという探査機がこの惑星を訪れていました。

カッシーニは13年にわたってデータを地球に送りながら土星の周りを294周した後、2017年9月に土星の厚い雲の中に飛び込むという最後のミッション「グランドフィナーレ」によって土星探査を終了しました。

では、この土星に人間が落ちるどうなってしまうのでしょうか?

木星のような地獄が待ち構えているのでしょうか?地球を超える楽園が待っているのでしょうか?

今回は土星に落ちるとどうなるのかについてご紹介したいと思います。

まず、土星に向かって落ちていく間、土星の周りを取り囲む輪っかの信じられない眺めを目にすることでしょう。

土星の環は何十億もの小さな氷の粒や石のかけらでできており、その中に岩石が散らばっています。

土星の重力は地球より7パーセント大きいだけであるため、はじめは地球に向かって落下していくのと同じような速度で落ちていきます。

ほどなくして、アンモニア結晶でできた白く輝く雲に突入します。気温はおよそマイナス130℃で気圧は1気圧前後。

安心してください。今回はすでに特別なスーツを装着しています。

さらに、進みましょう。

やがて、アンモニアの雲の底に到達し、2番目の層に入ります。この暗褐色の雲は硫化水素アンモニウムと硫化アンモニウムでできています。

ここであなたは2気圧から4気圧の圧力とマイナス100℃ほどの気温を体験します。

この雲の奥へ落ちていくにしたがって、日光が届かなくなるため、周りが暗くなっていくのに気づくことでしょう。

時速1,770キロの激しい風が吹き付けてきます。

土星では、太陽系で観測されたもののなかでは最速レベルの風が吹いており、生身の人間がここまで到達できたとしても、ぐちゃぐちゃに砕け散っていたことでしょう。

ですが、特殊な宇宙服に守られているため、安全に奈落の底へ落ちていくことができます。

225キロほど落下すると、ようやくこの地獄の層の底へたどりつき、今度は黒くそびえ立つ水氷(すいひょう)の雲の領域に入っていきます。

いくつもの恐ろしい雲の層を真っ逆さまに落ちていきながら、あちらこちらで静電気によって巨大な弧を描く稲妻を目撃するでしょう。

この段階で大気は約10気圧になっており、気圧はさらに急激に高まっていきます。

落下し始めてから2時間以上経ち、約400キロ落下しました。

ですが、周囲の環境はよりカオスに近づきます。

今、あなたがいる未知の環境では気温が一気に約100℃にまで上がり、極めて厳しい環境になってくることでしょう。

ものすごい気圧の中で水素とヘリウムが液化する領域にあなたはゆっくりと入っていきます。

周囲の気圧が大きく増したため、あなたと周囲の密度が同じくらいになり、落下速度が落ちていきます。

何時間も落下し続け、3万2,000キロほど土星の内部に入ると最大200万気圧ある金属水素の領域に到達します。

約9,000℃にも達する熱のため、周囲が白く光っています。

この壮大な金属水素の海が土星の巨大な磁場をつくっているのです。

おそらく数週間沈み続けると、およそ5万6,000キロの深さに達し、突然、土星の核にぶつかるでしょう。

その表面は圧縮された岩石と鉄と特異な氷でできており、大きさは地球の約2倍あると考えられています。

あなた木星の際に学習しなかったのですか?もう帰れませんよ。

1万2,000℃を超える高温と最高1,000万気圧の圧力の中、あなたはたったひとりどこへも行けません。



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