NASAの探査機ジュノーは木星の雲に隠れた驚異的な画像を送り届けるなど、革新的なミッションを続けています。そして今回ガニメデ北極の最初の画像が送られて来ました。
ガニメデは太陽系最大の衛星であるばかりでなく、自身の磁場と地下の海を共に持つ唯一の衛星でもあります。地下の海は同じガリレオ衛星であるエウロパにも存在するものの、その体積は地球の海洋を全て合わせた量を上回っています。
この星を覆う氷と磁場の相互作用はNASAが観測を行なう理由の一つでもあります。木星の強力な磁場が発するプラズマが衛星に達すると、帯電した分子が磁力線によって両極へ運ばれます。地球であれば分子が大気に衝突してオーロラが見えるのですが、ガニメデには大気がほとんどありません。そこでこうした分子は凍った衛星表面に衝突することになります。
ジュノーに搭載された木星極光赤外作図装置(Jovian Infrared Auroral Mapper – JIRAM)の観測によればこのプラズマは氷を変質させています。赤道付近の氷は結晶構造をとりますが、極地の氷はアモルファス(非結晶)構造です。プラズマが絶え間なく降り注ぐため氷中にある水分子の結合関係が変化しているのです。
ローマにあるイタリア国立天文物理研究所(the National Institute for Astrophysics)でジュノーの探査に参加するアレッサンドロ・ムラ氏は声明でこう語っています。「JIRAMのデータによればガニメデ北極周辺の氷は降り注ぐプラズマによって変化を受けています。この現象を初めて知ることができたのはジュノーによって北極全体が観測できたからです」
JIRAMの主な任務は木星の渦巻く雲の下にある天候層が発する赤外線の解析ですが、研究チームはそれ以外の目的にも装置を活用しています。
イタリア宇宙機関でJIRAM装置に関するプログラム・マネージャーを務めるジュセッペ・シンドニ氏は言います。「こうしたデータはジュノーが木星の衛星観測に力を発揮する偉大な科学成果の一例なのです。」
上記の画像は2019年12月26日、ガニメデの地表から約10万km離れた地点で撮影されました。ジュノーはあと1年ほど探査を続ける予定です。そして2021年7月30日には木星を回る氷の衛星を汚染しないよう、軌道を外れて木星へ落下することになっています。
ただ2030年までにはガニメデの新たな情報が得られそうです。欧州宇宙期間(ESA)が2022年に木星衛星探査機JUICE(JUpiter ICy moons Explorer)の打ち上げを計画しており、2029年にはガニメデ、エウロパ、そしてカリストの観測が始まる予定です。
reference:iflscience