ハッブル宇宙望遠鏡は地上547kmの軌道を30年間周り続けています。ここ数年は経年劣化で何度か不具合を生じていますが、それでも遠い宇宙の驚異的な写真を届ける役目は健在です。
例として今月初め、ハッブル望遠鏡はその太陽系観測機能を利用して13.5億km離れた星、肉眼だと小さな光の点にしか見えない土星の高精細画像を撮影しました。
現在土星の北半球は夏季に当たり、星の北側半分が私たち(と太陽)の方へ傾いています。
ただ夏とは言っても私たちが想像するような季節ではありません。ガスでできた巨星の熱は太陽ではなく主にその内部から生じたもので、平均気温は摂氏マイナス178度という低さです。
撮影された画像は人の目を引くだけでなく、科学者に惑星の詳細な情報を教えてくれます。例えば北半球でかすかに赤い「もや」が見つかったのです。
NASAの見解によればこれは太陽熱によって大気循環か、あるいは惑星上の光化学スモッグが変化しているのではないかということです。一方画像で下の方に見える南極はかすかに青い色をしています。
「ほんの数年で土星の季節変化が分かるというのは驚くべきことです。」NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者エイミー・サイモン氏はそう語っています。
画像の中には82個ある土星の衛星の内の2つ、右に小さな点のように見えるミマスと、下にある少し大きな点、エンケラドゥスも見て取ることができます。
ハッブル望遠鏡は1990年の打ち上げ以来130万回以上に及ぶ観測を行なっており、画像の多くは遠方にある銀河や星雲、恒星などですが、時には地球に近い惑星を撮影することもあります。
例えば土星の画像は外惑星の大気状態を記録するOPALプログラム(the Outer Planet Atmospheres Legacy )の一環として毎年撮影されていますが、どの写真にもわずかな違いを見ることができます。
莫大な費用を掛けた長期ミッションを待たずとも科学者が私たちの太陽系を観察し続けられるのは、こうした詳細画像があってのことなのです。
ただ土星の驚異的な輪がどのようにしてできたかなど、探査機なしには得られない答えもあります。
「NASAのカッシーニ探査機が土星の大気に降り注ぐ微小物質を測定したことによって土星の輪はあと3億年程度しか存続できないとの推定がなされ、このことで一連の輪の成り立ちが比較的最近なのではないかとする議論を生んだのです。」カリフォルニア大学バークレー校の惑星科学者マイケル・ウォン氏はこのように語っています。
reference:sciencealert