木星は形成された初期の段階では、太陽のようにほぼ水素とヘリウムだけで構成された惑星であったと言います。
しかし、約45億年前に地球の10倍程度の質量を持つ巨大な岩石惑星が木星に衝突し、衝突した天体が木星の深部まで到達したことで、木星の中心核になったというのです。
また、この太陽系最大のガス惑星は太陽になり損ねた星とも言われていることはご存知でしょうか?木星はなぜ太陽になり損ねた星なのでしょうか?木星が太陽に進化を遂げると地球には何が起こるのでしょうか?
今回は木星が太陽に進化すると何が起こるのかについてご紹介したいと思います。
初めにお話ししたように、木星は岩石惑星が衝突する前までは太陽と同じようにその大部分が水素とヘリウムでできた星でした。では、どうして木星は太陽のような恒星になれなかったのでしょうか。
太陽で行われている熱核融合反応を継続的に生じさせるためには最低でも、1000万度もの温度と1000億気圧もの圧力が必要であると考えられています。
現在の太陽の中心では、1500万度もの高温かつ2500億気圧の状態になっており、これにより水素が熱核融合反応を起こしてヘリウムとなり、莫大なエネルギーを放出しているのです。
一方、木星の温度は、3万6000度、圧力は4000万気圧程度ですから、核融合反応を行うには温度も低く、気圧も小さすぎる状況にあるのです。しかし、木星があと少し大きければ太陽に進化することができると言います。
物理学の理論的な計算によると、木星の質量が現在の太陽の8%以上あれば、継続的に熱核融合反応が起きる、つまり太陽のような恒星になれるという結果がでているのです。すなわち木星が現在の84倍ほど重かったとしたら2つ目の太陽が空に輝いていたかもしれないというわけです。
では、もし木星にさらに大量の水素とヘリウムが存在し、質量が現在の84倍となり、太陽に進化を遂げたとしたら何が起こるのでしょうか?
我々人類は、突然明るく輝き出す木星を目撃することとなるでしょう。そのとき地球には何が起こるのか。太陽が2つになってしまうため、灼熱の惑星になってしまうのでしょうか。
おそらくそのようなことは起こりません。なぜなら、地球から太陽までの距離が1億5000万Kmなのに対して、地球から恒星化した木星までの距離は、7億5000万Kmも離れているためです。
また、質量も太陽の12.5分の1でそれほど大きなエネルギーを生み出すことは出来ません。おそらく、あまり暖かくない明るい星が輝き始めたなという感覚でしょう。
残念ながら、人類の生存にはそれほど影響がない可能性の方が高いのです。ただ、現在より気温が高くなることは間違いありません。そのため様々な気象変動が生じるかもしれません。
そして、この恒星化した木星は太陽系の他の惑星にはどのような影響を与えるのでしょうか。
例えば、木星の隣にある火星ですが、木星までの距離はそれぞれの惑星の公転軌道によって日々変動しているものの、6億Km以上離れているため、やはりその影響は火星をほんの少し温暖化させる程度でしょう。
同様に木星と隣同士のもう一つの惑星である土星の場合でも6億Km以上あるため、土星の環を形成している氷すら溶けない程度の熱エネルギーしか届かないでしょう。火星や土星より遠い他の惑星に関しては言うまでもなく…
木星がある日突然恒星化しても太陽系の他の惑星系にあまり影響を及ぼさないということは、意外だったのではないでしょうか。ただ、これは木星が太陽の12.5分の1の質量しかないという前提のもとで恒星化した場合のことだということをお忘れなく。
木星の質量がさらに大きく太陽に近いのであれば、太陽と木星は連星となってお互いに回り合う存在になっていたでしょう。
この場合は、地球をはじめ他の惑星の公転軌道も現在のものと異なり、現在の太陽系からは全く想像もつかない世界になっていたことでしょう。一つ確実に言えることは、私たちは皆滅亡してしまうということです。太陽、または恒星化した木星に飲み込まれ、蒸発死する最後は避けたいものです。