人智を超えるパワーをもつ『世にも奇妙な』宇宙の天体

2021.01.31
auther vaience
人智を超えるパワーをもつ『世にも奇妙な』宇宙の天体

宇宙では今まで見たことも聞いたこともないような環境を持つ星が次々に発見されています。人類の先祖である霊長類がこの世界に出現してから約6500万年。我々人類の宇宙に関する知識は、まだ生まれたての赤ちゃんがようやく周りの風景を認識し始めた程度のことなのかもしれません。

今回は、前回紹介した異常な星々をさらに上回る世界に皆さんをお連れしたいと思います。さあ、宇宙のロマンを追い求める旅にでましょう。

L1448-MMは地球から750光年ほど離れたペルセウス座にある質量が太陽の3パーセントから9 パーセント程度の恒星の赤ん坊。ですが、赤ん坊であるにもかかわらず超高速な分子ガスの流れを出している天体です。

この分子ガスの流れの速度は秒速80km程度、時速に直すと29万kmにも達し、これは月に1.3時間ほどで到達できる速度です。

また、この超高速な分子ガスの流れの中に水素原子と酸素原子を含んだ10万度の高温のガスが含まれていることが観測データから明らかとなっています。この水素原子と酸素原子を含んだ10万度の高温のガスは、放出されて冷えていき、星を取り巻くほこりと相互作用をすることで水分子が形成されると考えられます。

そしてなんと、この超高速分子ガスの流れが作り出す水の量は、1秒あたりアマゾン川を流れる水量の1億倍に相当すると言います。宇宙旅行中に シャワーに困ったら、この天体を訪れることにしましょう。

オウムアムアは2017年10月に発見された太陽系外から飛来した小天体ですが、発見当初、その形や異様な加速などから地球外生命体の宇宙船なのではないかという考察が繰り広げられていました。

この小天体においては、彗星のようにガスを噴出する様子が観測されなかったため、ロケットがガスを噴射する反作用で推進力を得るのと同様な効果は起こらないはずですが、オウムアムアの軌道を精密に分析した欧州宇宙機関等の研究グループは、重力だけでは説明がつかない推進力を検出しています。

なぜオウムアムアでこのような推進力が発生したのか、それを説明するために恒星の光の圧力やヤルコフスキー効果など様々な説が出されましたが、いずれもオウムアムアには当てはまりませんでした。

そんな中、ハー バード・スミソニアン天体物理学センターの研究者は、異星人文明が作った宇宙船である可能性も否定できないと考えたのです。現在ではこの説は有力なものではありませんが、オウムアムアが異星人の作った宇宙船の残骸だとしたらかなりワクワクするような話です。

うみへび座V星は、地球から約 1200 光年の距離にある赤色巨星です。星の一生の終わりの段階にある年老いた星ですが、その近くから、高速で放出される複数の高温のプラズマの塊が観測されたのです。

この高温のプラズマの塊は、火星の2倍ほどの質量を持つというのです。この高温のプラズマの塊の放出は8.5年ごとに起こり、過去400年間にわたって繰り返されてきたと言います。そのメカニズムははっきりしていませんが、うみへび座V星の未発見の伴星によるものではないかと考えられています。

この伴星はうみへび座V星の周りを8.5年周期の楕円軌道で回っており、公転中に大きく膨らんだうみへび座V星の外層部分に入り込み、その際に奪いとった主星の物質から、伴星の周囲を取り囲む円盤が形成され、これが時速約80万kmという高速プラズマ塊の発射台となるというのです。

火星の2倍ほどの質量のプラズマの塊が時速約80万kmという途方もない速度で襲ってきたら、地球など一瞬で吹き飛んでしまうことでしょう。

ラブジョイ彗星とは、オーストラリアのアマチュア天文家テリー・ラブジョイが発見した5つの彗星のことです。フランス・パリ天文台の研究チームは、2015年1月に太陽に接近したラブジョイ彗星が、1秒間にワインボトル500本分ものアルコールを宇宙に放出していることを発見しました。

そして、ラブジョイ彗星が放出するアルコールは、人間が飲む酒に含まれているエチルアルコール。エチルアルコールが彗星から発見されたのは初めてのことでした。この彗星があれば、地球上の酒飲みが一生困ることがないほどのアルコールを提供してくれるでしょう。

また、フランス・パリ天文台の研究チームが発表した論文によると、ラブジョイ彗星はアルコールだけでなく糖を含む21種類の有機分子も放出していたとのことです。

その中の一つであるグリコールアルデヒドは他の分子と結合し、リボースやグルコース等の糖を形成し、さらにこれらが連なってRNAやDNAのような核酸を形成します。

NASAもこの発見について、彗星が地球上の生命の誕生に必要な複雑な有機分子の源だったという説を裏付けるものであると解説しています。やはり地球の生命の起源は、彗星にあるのかもしれません。

PSRJ0537-6910は、大マゼラン雲の中にある超新星の残骸「NGC2060」の中心部に存在する中性子星です。中性子星というのは、大質量の恒星が超新星爆発によってその中心核が圧縮され、陽子と電子が結合して全て中性子のみで出来た星です。

その質量が太陽の1.4倍で、直径12km程度、1立法cmあたりの質量が109トンにもなります。きわめて重力が強く人間が降り立ったら押しつぶされてしまうでしょう。

中性子星PSRJ0537-6910は、これまで知られている中で最も速い1秒間に約62回転という速さで回転しています。超高速で回転するコマのように見えるでしょう。こんな速さで回転する星に住みたいですか。

さらに、この中性子星PSRJ0537-6910の周辺には超大質量ブラックホールを除き、宇宙で最も強い電場があります。その強さは、電力に換算すれば380穣W(3.8×10^31W)にもなります。人間を含めどんな生命もこの電場には耐えられません。

WD1145+017は、おとめ座にある地球から約570光年離れたところにある白色矮星です。WD1145+017」はその重力によって、自身の周りを周回する惑星を粉砕し、欠片を取り込んでいました。この様子から「ゾンビ星」とも言われている天体。

白色矮星WD1145+017は、太陽の0.6倍の質量を有し、太陽の直径の2パーセントの大きさで温度は15000度ほど。白色矮星とは、質量が太陽の3倍以内の恒星が死の過程で到達する携帯の一つ。

また、白色矮星には、核融合が停止した時点の構成物質である炭素と酸素を主成分とし、表面に水素やヘリウムが薄く存在します。しかし、一部の白色矮星を観測すると、明らかにケイ素や鉄といった重い元素が存在することが分かっていました。

白色矮星が生成するような恒星は、普通そのような元素を核融合では生成しませんし、恒星が形成される段階でその物質が混ざっていたとしても、重い元素は重力により中心部に沈んでしまうため、白色矮星の表面で観測される事はあり得ません。

この様な元素は、白色矮星が生成された後、元々白色矮星のもととなる恒星の周りを回っていた岩石惑星の破片から供給されたと言う仮説がありました。この仮説は、白色矮星WD1145+017の観測によって正しいことが証明されたのです。

しかし、このような岩石の破片を纏っている期間は短いと考えられています。高温である白色矮星の放射熱で蒸発してしまうか、軌道が縮まって白色矮星に衝突してしまい、最終的には単に重元素で汚染された白色矮星のみが残ると考えられているからです。

我々の太陽が50億年後に白色矮星になったら、地球もこの岩石惑星のように破壊され、最終的に白色矮星に飲み込まれてしまうでしょう。

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