太陽系第三惑星、生命が宿る星「地球」。その表面の約7割を覆う広大な海が存在する美しい青い星。地球には多種多様な生命が存在しており、陸と海合わせて870万種以上の生物が繁栄しています。
また、食物連鎖の頂点には高度な知能を持つ生命体が君臨しているのです。地球は現在進行形で常に回り続けており、その形は回転楕円体です。
ですが、もしもこの地球という星が立方体だったら何が起こるのでしょうか?バイエンスの最新テクノロジーを使用して、地球の形を変えてみることにしましょう。
今回は、地球が立方体になったらどうなるのかについてご紹介したいと思います。
地球の直径は12742km。今回は、1辺が10000kmの立方体の地球を想定します。その他の条件は元の地球と同じとしましょう。太陽からの距離は1億5000万km、公転周期は365日、自転周期は24時間、地軸は23.4度傾いているものとします。
では、早速形を変えます。まず、重力からみていくことにしましょう。重力は物体の中心に向かって働きます。つまり、立方体の地球「キュービックアース」において重力は立方体の中心に向かって働きます。
そのため、キュービックアースでは、各面の中心点を除いて、重力は地面に対して傾いて働くことになります。
階段に立っているところを想像してみてください。あなたはまっすぐ立っているつもりでも階段に対しては傾いて立っているはずです。そのような感じになります。
そして、重力の強さは物質の中心との距離によって決まるため、物質の中心から離れれば弱くなり、逆に、物質の中心に近づけば強くなります。地球からある程度遠ざかると、無重力状態になるのはそのため。
ですから、キュービックアースでは、重力は各面の周辺で弱く、各面の中心に近づくほど強くなります。つまり、立方体の地球では、平らな地面上の中心に向かって物が転がり落ちていくことになります。
続いて、キュービックアースでの大気はどうなるのか。大気を構成する窒素と酸素の分子は重力の強いところから順に降り積もっていくことになるでしょう。そのため、キュービックアースでは、大気が各平面の中心にドーム状に形成されます。
ただし、大気の量を元の地球と同じと考えると、立方体の地球を全てすっぽり覆うほどの大気の量は存在しません。そのためドーム状の大気の周辺には真空の部分が残ることになります。
気圧は各面の中心が一番高くなり、おそらく310気圧ほどになります。これは深さ3100mの深海の水圧に相当します。バイエンススーツがなければペシャンコに潰されてしまうことでしょう。
そして、気圧が1気圧になるのは各面の中心から730kmほど離れたところになります。ただし、離れ過ぎないように注意が必要です。770kmほど離れると、今度は、気圧が0.5気圧にまで下がり、人間は酸素マスクなしでは生存できなくなってしまうのです。
さらに、気温は気圧と深く関係しています。気圧が低くなるということは気温も低くなり、気圧が高くなれば気温も高くなります。高い山に登ると、気温が下がるのはこのためです。よって、キュービックアースの各面の中心の気温は、950°C近くになります。
地獄の星と呼ばれる金星ですら、表面の気圧は92気圧、気温は400°C程度ですから、キュービックアースの各面の中心は金星を超える環境になります。ただし、各面の中心から800km〜1000km離れると、元の地球の熱帯と同程度の気温になります。
どうやらキュービックアースでは各面の中心から700km〜800kmほど離れた限られたゾーンでしか人間は生きていけそうにありません。また、お世辞にも快適とは言えなさそうです。
ちなみに南極と北極がある面では、地軸が傾いているために、一応、昼と夜はあるものの、それぞれが半年間も続くことになります。そして、最高気温は2°C、最低気温は−118°Cにまで下がります。こちらもとても生身の人間が住める環境ではなさそうです。バイエンススーツを大量生産すれば、大儲けできそうです。
また、海も元の地球とは大きく異なります。まず、キュービックアースの海は1つの面に集まるものと考えましょう。そうしないと、海の大きさがあまりにも小さくなってしまうためです。
重力の関係によりキュービックアースの海は、海のある面の中央にドーム状に形成されます。直径は3500km、高さは300km、海水面での、気圧は9気圧、気温は73.5°Cになります。
日本列島の長さが3500kmほどですから、ほぼこれと同じ大きさですね。ずいぶんとしょぼい姿になってしまいました。ただ、高さは300kmと大迫力です。元の地球の大気圏の高さが100kmほどですから、元の地球の大気圏を余裕で突き抜けてしまいます。
元の地球では極地方と赤道地方ではずいぶん気候が異なります。これは地球が丸いために太陽の入射角度が緯度によって異なるためです。もちろん、太陽が90度の角度で当たる場合が、単位面積当たりで、一番、太陽からエネルギーを受け取ることになります。
しかし、キュービックアースでは、各面は平面ですから、どこでも太陽の入射角度は90度になります。そのため、緯度による気候の差はなくなってしまうということになります。
そして、キュービックアースの海流について。元の地球で海流が発生する大きな原因の1つは極地方と赤道地方で海水に温度差があるためです。しかし、キュービックアースではそのような海水の温度差はありません。海が小さすぎるためです。
しかし、海流が発生するもう一つの大きな原因に風があります。キュービックアースの海では、計算上、北半分のどこかに常に1個の台風が存在することになります。キュービックアースの海の海流は、この台風の風によって、北半分では時計回りに、南半分では反時計回りに、海を周回するように2つ形成されます。
私達人間が住むのに適しているのは、この海がある面の、しかも海から60kmほど離れた幅20kmほどの帯状のゾーンになります。このゾーンの気圧は0.5〜1気圧、気温は20°Cほどになります。ただ、その面積は日本の国土の半分ほどしかありません。
やはり、元の地球の方が生物にとって住みやすそうです。元に、戻してあげることにしましょう。