現代に生きる恐竜「ワニ」。
約2億年以上前の中生代・三畳紀中期に誕生した爬虫類であり、大量絶滅をも生き抜いた息の長い動物です。地球に誕生した当時のワニは体長12メートル、体重が8トンを超える巨大な爬虫類で、恐竜さえも襲うほどの凶暴さをもち合わせていました。
このようなどう猛さを祖先から受け継いだワニは、現代社会においてもヒトを襲うことが度々報じられています。では、もし人間がワニに喰われるとどうなるのでしょうか?ワニに襲われた際、どう対処すればいいのでしょうか?
今回は、ワニに喰われるとどうなるかについてご紹介したいと思います。
野生のワニを間近で見たことのある方はあまり多くはないでしょう。というのも、日本では動物園で飼育されているワニがほとんどであり、野生のワニは一匹も生息していないと考えられているためです。
そのため、人がワニに襲われたというニュースが報道されることもありません。もしあなたが国内で野生のワニを目撃したというのなら、それは緊急事態。すぐに通報するべきでしょう。
また、ワニはれっきとした肉食動物ですが、基本的に小型の哺乳類やカエルなどの爬虫類、鳥や魚など自分より弱い生物を捕食しています。そのため、人を襲うようなワニは非常に稀。
また、地球上には23種類のワニが生息していますが、アリゲーター科に属するワニは比較的大人しく、人を襲うことはありません。
その一方で、クロコダイル科に属するワニは荒々しい気性をもっています。アフリカ全土に生息するナイルワニやインド南部からオーストラリア北部にかけて生息するイリエワニなど、クロコダイル科に属するワニは時として人を襲うことがあり、ナイルワニは年間で約200名の人命を奪っているとされています。
このような凶暴なワニの数は年々減少していると言います。理由は人間です。財布などワニ革でできた製品を作るために、ワニを大量に殺したため、ワニの数が著しく減少しています。
また農作物を生産するために土地を耕したり、森林を開拓することによって、ワニが生息する地域がだんだんと狭くなり、生き続けるのが困難になっているのです。こうしたワニの個体数が激減し絶滅するのを食い止めるため、ワシントン条約により商業目的での輸入や輸出が禁止されているのです。
このように考えると、人を襲うワニはナイルワニやイリエワニなど一部だけであり、その数も以前より激減しているため、現代では脅威ではないように感じるかもしれません。
ところが、世界各地に目を向けるとワニが人を襲うというニュースは報道されています。2011年9月にフィリピン・ミンダナオ島のブナワン地区で捕獲されたイリエワニの「ロロン」は全長が6メートル17センチ、体重が約1.1トンという、捕獲されたワニの中では最大で、ギネス世界記録にも認定されています。
この「ロロン」は、水牛を噛み殺したり、川沿いにいた住民を行方不明にするなど、少なくとも2人の命を奪ったと考えられています。
ロロンは捕獲後にブナワン・エコパーク研究センターで飼育されて一般公開もなされました。観光客にも人気があったといい、捕獲や射殺されることなくその生涯を終えました。
また、ロロンとは反対に人々にトラウマを受けつけるレベルの犠牲を出したワニがいます。それが、東アフリカの内陸部にあるブルンジのタンガニーカ湖やルジジ川に生息したナイルワニの「ギュスターブ」です。
2007年にアメリカで公開されたハリウッド映画『カニング・キラー/殺戮の沼』に登場する人喰いワニのモデルになるなど、ギュスターブの被害は伝説と化しています。
体重は900キログラムから1トン、体長は6メートルと推定され、イリエワニの「ロロン」と大きさはほぼ同じ。
ですが、ギュスターブは300人を超える犠牲者をだしているのです。この狂暴なワニを退治するために過去に幾度も射殺が試みられましたが、すべて失敗に終わり、人間の前から姿を見せなくなりました。
ギュスターブの硬い皮膚には、機関銃やけん銃による弾痕が残っていたといいますが、致命傷を与えることはできなかったとのこと。
では、こうした獰猛で巨大ワニは人間にどのような危害を与えるのか考えてみましょう。ご安心ください。バイエンススーツがあるため、問題はないかと思われます。
まずはワニの噛む力。アメリカ・フロリダ州立大学の古生物学者の研究グループがワニ目に属する23種類、すべてのワニの噛む力を計測しました。
その結果、噛む力が最大だったのが、イリエワニで、その力は1平方センチメートル当たり約260キログラムであることが明らかとなりました。
私たち人間がステーキを噛むときに発揮する力が1平方センチメートル当たり約10~14キログラム、トラやライオンなどの肉食動物の噛む力が1平方センチメートル当たり約70キログラムであるのと比較しても、ワニの噛む破壊力は想像を絶するものでしょう。
そのため、ワニに噛まれてしまったら、抜け出すことはほぼ不可能です。そして、獲物に噛み付いたワニは自身の体をグルグルと回転させるデスロールという技を使います。この技により、獲物を食いちぎろうとするのです。
仮にワニの口の中に入ってしまい、噛まずに飲み込まれてしまったとしても、ワニの胃から吐き出される強力な消化液が待ち構えています。ワニは肉食動物であるため、消化液の酸化力も強く、鉄のくぎをも溶かしてしまうほどです。
ワニの体内で食べ物を4時間かけて消化し、骨以外の組織は綺麗さっぱり溶けてしまいます。つまり、ワニに喰われてしまったら、それが最後。あなたは無事にあの世に成仏することになります。
最後にワニに喰われそうになったとき、私たち人間はいかにしてこの凶暴な生物から逃れるべきなのでしょうか。
あなたが湿原などそばに川が流れる沼地でワニに出くわしたとします。あなたは川を泳いで逃げ切れるでしょうか。
不幸なことにあなたは最悪の選択をしてしまったようです。水中のワニは非常に危険。原付バイクよりも速い時速32キロメートルで泳ぎ、あなたは水の底へ引きずり込まれてしまいます。
となると陸の上を走って逃げるほかありません。ワニの走るスピードは時速18キロメートルで、自転車のスピードほど。運が良ければ、逃げ切れる可能性は高いでしょう。一直線に猛ダッシュすることをおすすめします。
もし、ワニに噛まれてしまったらどうすればいいか?ワニは簡単に捕食できる獲物を欲しているため、目や鼻先をめがけて殴ることをおすすめしますが、正直生還できる可能性は非常に低いことでしょう。
ですが、もし腕を噛まれたのであれば、不幸中の幸いかもしれません。ある決断をおすすめします。
それは、自分の腕を生贄にすることです。ワニがデスロールをしている間に、肩の力を抜き噛みちぎられるのを待ち、ワニが腕を食べている間に逃げるのです。
片手だけでは、バランスが悪くなり、走りにくいので、ずっこけないよう注意してください。では、検討を祈ります。