宇宙、それは永遠のロマン。太古より人類は、暗い空の向こう側で光を灯すものの正体を追い求めてきました。ただ光っている点のように見えるあの白い星も、青い星も全てに物語があり核融合反応を起こすことで発光し続けているのです。
また、地球から肉眼で観測することのできる星の数はせいぜい8000〜9000個と言われています。さらに、8000〜9000の星のほぼ全てが自ら光を発する恒星。惑星や衛星などは、太陽系内のもの以外、決して私たちの目で確認することはできません。
今までのバイエンスでも紹介したように、太陽系の外側には人間の想像を遥かに上回るような天体で溢れかえっています。ガラスの雨が降る星や、墨よりも黒い星など日を追うごとに、より不思議な天体が現れるのです。
そして、今回紹介するのがJ1407bという系外惑星。J1407bとはどのような天体なのでしょうか?そして、いかにして発見されたのでしょうか?
今回は太陽系外惑星「J1407b」についてご紹介したいと思います。
J1407bは、地球から約430光年離れたJ1407という恒星の周りを公転している惑星です。430光年とは、太陽と地球の距離のおよそ2700万倍。
想像ができないほど遠く離れた場所に存在し、さらに自ら光を発しない惑星など人類はどのように発見したのでしょうか?
それは、トランジット法と呼ばれる方法です。トランジット法とは、惑星が主星の前を通り過ぎる、トランジットする現象を観測する方法。公転する惑星が、地球から見て恒星の手前を通り過ぎる際に、恒星の明るさがわずかに減少します。
そして、この減光の深さから主星と惑星の半径比、減光の継続時間から惑星の軌道傾斜角と主星の密度などを求めることができます。
さらに、これらの情報を視線速度法から得られた惑星の質量の情報と合わせることで、惑星の密度を調べることができ、観測された惑星が主にガスでできているのか、岩石のように密度の大きな物質でできているのかなどを調べることができるのです。
そして、2007年の4月〜5月の間のおよそ56日間、当時名前がついていなかったJ1407に、複雑、かつ大きな明るさの減少が観測されました。その明るさの減少は非常に大きく、一時はJ1407の明るさは15分の1以下になってしまうほどだったと言います。
その時の観測結果から、J1407の周りに巨大なリングを持つ惑星が公転していると推測されたのです。その惑星がJ1407bと名付けられ、今まで発見された中で最も大きなリングを持っている惑星であり、スーパーサターンに分類されています。
では、J1407bについて詳しくご紹介しましょう。2007年以降、2020年現在に至るまで主星であるJ1407の明るさが減少していないことから、J1407bの公転軌道の形は離心率の大きい楕円形だとされています。
J1407b自体の大きさははっきりとわかっていませんが、木星の数十倍の質量を持つ、大きな惑星であると考えられています。
ですがそれ以上に興味深い点が、土星にもあるようなリングの存在です。J1407bが持つリングの直径は、およそ1億2千万km。土星のリングと比較すると、なんと約200倍もあります。
これがどのくらい大きいかというと、仮に太陽系の太陽の位置にJ1407bがあった場合、リングは地球の軌道の半分弱、水星の軌道付近にまで到達します。仮に土星軌道にあった場合には、地球からは最接近時に月の10倍ほどの大きさに見え、肉眼でもはっきりとリングを観測できることでしょう。
また、質量も膨大で、土星のリングの質量の合計は直径数百kmほどの衛星程度である一方、J1407bのリングの質量の合計は地球と同じほどであると考えられています。
リングの数は30以上と考えられており、我らが土星と比較すると大迫力な見た目であることは間違い無いでしょう。まるで宇宙に咲く花のように、大きなリングをかまえているのです。
他にも、J1407bには、リングの間にすき間が観測されています。これは、J1407bの周りを回る衛星の影響と考えられています。衛星がリングを構成する細かい粒子を動かし広げたことでできたすき間というわけです。
土星や他の太陽系の惑星にも、同じような現象が見られており、リングのお守をしているような姿から、羊飼い衛星と呼ばれています。
太陽系の惑星の羊飼い衛星は、直径がせいぜい数十kmと小さなものですが、巨大なリングを持つJ1407bでは、羊飼い衛星の大きさは火星から地球くらいのサイズであると考えられています。
このような大きなリングが形成されたメカニズムは、よくわかっていませんが、土星のように長期的に安定したリングではなく、J1407bの衛星が形成されている最中であるという説があります。
J1407bが公転している恒星J1407は、太陽のおよそ0.9倍の質量を持ち、誕生から1600万年ほどが経過しています。人間の視点では途方もないくらい昔の話ですが、誕生から50億年経っている太陽系と比較すると、まだまだ赤ん坊。
太陽系の木星や土星も、かつては巨大なリングを持っていたが、数十億年の時間をかけてリングから衛星が形成されていったと考えられているため、数十億年後には、J1407bの巨大なリングも、現在の土星レベルに縮小している可能性もあるのです。
このように、人類は何百光年も離れた惑星についても、現在の観測技術を駆使することで調査することができているのです。現段階で、人類が発見している系外惑星は4397個。
宇宙には地球上の砂つぶよりも多い数の星が存在するとも考えられているため、この4397という数字は、まだまだ宇宙について知らないことの方が多いと言うことになります。
しかし、それは逆に、人々はさらなる奇妙な星を求めて探査を行うことができると言えるのではないでしょうか?
今後の科学技術の進歩に伴って、発見されるであろう新たな星々。宇宙は、まだまだ私たちにロマンを見せ続けてくれることでしょう。