地球の自転速度を20倍以上にするとどうなるのか?

地球は46億年という長い間、変わらず自転し続けてきました。時には、休みたい日もあったことでしょう。

ですが、雨の日も、風の日も、休むことなく回り続けてきました。今日も変わらず自転している地球にバイエンスのパワーでちょっかいを出し、自転速度を加速させると何が起こるのでしょうか?

そうですねえ、大体地球の自転速度の20倍以上にはしたいですね。地球の自転速度が速くなるとただ、1日が短くなるだけなのでしょうか?それとも、何か破滅的な結果になるのでしょうか?

今回は、地球の自転速度を20倍以上にするとどうなるのかについてご紹介したいと思います。

まず、今の地球の自転速度はどれくらいか確認しておきましょう。地球は公転軸からおよそ23.4度ずれた地軸を中心に24時間に1回転のペースで自転しています。

地球の直径から計算すると赤道付近ではおよそ時速1600kmの速度で回転していることになります。新幹線の最高速度が時速320kmなので赤道に立っている人はその5倍の速度で移動していると考えられます。

またなぜ、地球が自転しているかというと、それは地球誕生にまでさかのぼります。宇宙空間のガスやチリが渦巻くように集まって地球は生まれ、その頃から地球は自転を続けています。地球が存在している宇宙空間ではその回転を妨げるものはほとんどありません。

地球の自転を妨げる力がはたらかないということは、慣性の法則で自転を続けます。実際には太陽や月などから重力がはたらいていますが、地球の自転を止める方向の力ではないためほとんど自転速度は変わりません。

長期的にみると潮汐摩擦と呼ばれる潮の満ち引きによる海底と海水との摩擦や気候変動などによってだんだんと遅くなっていると考えられています。

もちろん何もしなければ地球の自転が20倍以上に速くなることはありません。今回も、強制的に変えてやる必要があります。

太陽系で最も速く自転する木星と同じくらいの自転速度にしてみましょう。木星の直径がおよそ14万3000kmですので、木星の赤道付近での速度はおよそ時速4万5000kmです。これは地球の自転速度のおよそ27倍となります。

頼みましたMr.VAIENCE。地球はどうなってしまうのでしょうか?

急激に自転速度を早くすると逆回転させようとしたときと同様に、天変地異が発生するという目に見えた結果しか起こらず、面白くありません。そのため、十分な時間をかけて地球を加速していくことで、じわじわとその影響を確認することが可能です。

早速、影響がみられるようです。赤道付近に海水が集まり、その結果、赤道付近の海水面は数cm上昇します。また、地球の自転が速くなっても人工衛星の公転周期は変わらないので、軌道の計算がずれることになります。

特に影響を受けるのは静止衛星と呼ばれる人工衛星でしょう。静止衛星は地球の自転周期と同じ公転周期で地球の周りを公転しているため、地球から見ると常に同じ位置に見える衛星です。地球の自転速度が速くなれば、静止衛星は自身の役割を失います。

気象衛星を使った天気予報の精度が低下し、衛星を使った通信システムは破綻することになるでしょう。衛星の軌道修正や再打ち上げなどが必要になり、経済的には大きな打撃になります。しかし、生活水準は大きく下がるものの、生命に与える影響は少ないでしょう。

まだまだ、木星の自転速度には程遠いです。自転速度が速くなるにつれてどんどん破滅的な結果が訪れます。

どんどんと早くなるにつれて、地球上の物の重量が小さくなっていきます。地球上で感じる重力は地球から受ける重力と遠心力の合計。

遠心力は回転の外側に向かってかかり、これは重力を打ち消す方向であるため、重力が小さくなっていくのです。自転速度が速くなるほど遠心力は大きくなるため、その分重量が小さくなるのです。

事実、現在の地球においても、遠心力の小さい北極や南極では赤道と比べて、重量が0.5%程度小さくなります。体重が少し減って喜ぶ人もいるでしょうが…その喜びも束の間。

さらに自転速度が速くなると遠心力によって海水が赤道付近に集まります。赤道付近の海水面が上昇し、赤道付近の低地は水没。人間が住める環境ではなくなってしまうことでしょう。

また、海水の大移動と同時に気候も大きく変化します。北半球には西寄りの偏西風、南半球には東寄りの貿易風がそれぞれ吹いています。これらは地球の自転によるコリオリ力と呼ばれる力によるものです。

コリオリ力は地球の自転速度に比例するため、地球が速く自転するほど偏西風なども速くなります。飛行機の航行ができなくなるだけでなく、さらには地球全体の気候が変化することが考えられます。

影響は偏西風だけではありません。非常に巨大な台風が発生します。台風が渦状になっている理由もコリオリ力が台風の目に向かってはたらくためです。

木星にも大赤斑と呼ばれる巨大な大気の渦がありますが、これも木星の非常に速い自転によるものであると考えられています。地球にも大赤斑のような巨大な渦ができる可能性は否定できないでしょう。

さらに、地球の自転速度が速くなることで地磁気も大きくなります。地磁気は地球の内部にある核と呼ばれる部分の外核で形成されています。外核はどろどろに溶けた液体の鉄やニッケルでできており、地球の自転によって外核が動くことで、電流が発生するのです。

この電流によって地磁気が形成されます。地球の自転と地磁気は強い関係があることが分かるでしょう。地球の自転速度が2%変動すると地磁気が20~30%変動するという研究もあるほど。ただし、これは数万年というスケールの話。早急に目に見えた変化はあまりないと考えられます。

地球の自転速度がおよそ17倍、時速2万8000kmになると、とうとう地球の重力と遠心力が釣り合うようになります。このとき、宇宙へ行く必要なしに、無重力を体験することになるでしょう。

もちろんみなさんが生きていればの話ですが。あらゆるものが宙に浮き、さらには地球の自転に振り飛ばされるような状態になるでしょう。楽しそうですね。これでも、木星の自転速度にはまだまだ達していませんが、またもや地球上の生命はこの段階で滅びていることでしょう。

地表が無重力になった後、さらに自転速度が速くなると今度は地球の形が変化します。木星と同じくらい地球の自転が速くなると地球の形も球形から楕円のような扁平な形に変形することが考えられます。

自転による遠心力は地軸からの距離に比例します。地軸から遠い赤道付近では遠心力は大きくなり、極に近づくほど小さくなります。この遠心力の差によって地球は赤道方向に引き伸ばされます。

実際、今の地球も完全な球ではなく、赤道方向に少し膨らんだ回転楕円形になっています。地球が変形すれば地殻変動が起きることになり、地震は多発し、多くの火山が噴火することでしょう。

最後に残るのは極端に赤道方向へと膨らんだ平らな地球だけです。あっ、これがフラットアース!?そんなわけありません!



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