親指を失った手に足の親指を移植するという大手術が行われる

靴修理の匠が仕事中に右手の親指を切り落としてしまったとき、もう仕事ができなくなると泣き崩れました。しかし、特殊な移植手術を受け、何ヶ月ものリハビリを経て、手の機能を取り戻した匠は、天職に復帰することができたのです。

Credit: UNIVERSITY HOSPITALS OF DERBY AND BURTON

靴修理店を営む男性が靴のかかとをトリミングする作業中に手の親指を失う大ケガをおいました。しかし、幸いなことに本人の足の親指を移植する手術を受け、みごとに代わりの指が再建されたのです。

2019年の1月9日、熟練の靴修理職人であるデイヴィッド・リーさんは誤まって右手の親指を切断してしまいました。自分の店を移転して6週間が経ったばかりのことでした。

「すぐに重傷だと気付いたのですが、靴の修理ができなくなることばかり心配しました」とリーさんは回想しています。「自分の店を失うことになると思って、大泣きしてしまいました」

リーさんが運び込まれたのはイギリスのダービーにあるロイヤル・ダービー病院。そこでリーさんは医師から驚くべき提案を受けます。「足趾移植術」という珍しい手術で手の親指の代わりになるように足の親指を付けることができると言うのです。

リーさんの手術を行った手外科医のひとりであるジル・アロウスミス医師はこう説明しています。「手の親指を再建するには様々な方法がありますが、人体において最も手の親指に似ている足の親指を使うことが機能と見た目の面で最も有益なのです」 アロウスミス医師が加えて言うには、この手術は「普通は指の付け根の関節から」指を完全に失くした患者のみを対象にしているということです。

リーさんは「自分の足の親指を移植すれば仕事を続けられるかもしれないと聞いて、即座に『やりましょう』と言いました」と話しています。

手外科と顕微外科の専門誌『Journal of Hand and Microsurgery』に2010年に掲載された研究報告によると、手の指と足の指は構造と関節可動域が似通っているばかりでなく、つまむ動作に必要な敏感な皮膚と爪も類似しているので、足の指は手の指の代わりにするには、ほぼ理想的だということです。

手の親指を付け根から失った患者にとっては足の親指の移植のみが「十分な機能というより、むしろ、最適な機能」を得るための手段となります。足の人差し指に比べて丸みのある親指の方が手の親指の外見と機能が似ていますが、親指と人差し指のどちらでも移植に使うことができます。

Credit: UNIVERSITY HOSPITALS OF DERBY AND BURTON

足の親指を切除すれば足の形に明らかな欠損が生じてしまい、歩行するために床や地面を後ろへ蹴る力が弱くなることが懸念されますが、たいていの場合、手術後も正常に歩くことができます。前述の2010年の論文には、このめったに行われない手術は往々にしてリスクを冒す価値があるものだと明記されています。「すべての指の中でも『指の王』たる親指を失うことが最も深刻に手の機能を損ないます。ゆえに難しい手術であっても受けるべきであり、また、手術後にリハビリに取り組むことが重要であると納得してもらえるはずです」

リーさんが事故の5日後に受けた処置は10時間の大手術となりました。アロウスミス医師を含む医療チームがリーさんの足の親指を切断し、手に取り付けました。その後、リーさんは同病院の専門家の指導のもと、手の機能と握力を正常なレベルまで回復させるために何ヶ月もリハビリ治療に励みました。

「あれから1年が経って、私は店に戻り、愛する仕事をまたしています」と同病院が公開した動画でリーさんは語っています。

reference:livescience