ぜい肉をあえて強調するという新感覚ファッションが誕生する

女性にとって、ぜい肉は覆い隠すものとされてきました。しかし、そのぜい肉に美を見出す新しいファッションが、ブラジルのデザイナー、カロリーニ・ヴィットー氏(Karoline Vitto)の服と金属ワイヤー装具のコレクションで登場しました。

英国ロンドンの美術大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程でヴィットー氏が制作したコレクション「素材としての体」には、女性の体の丸みや膨らみを多彩に強調する七着の服が揃えられています。

修士号を取得したヴィットー氏は建築とファッションのデザイン・ジャーナルDezeenの取材で、「とても個人的な場所」から、どのようにこのプロジェクトが始まったのか語っています。何年にもわたる自身の体との関係が発想の元になったということです。

ブラジルで生まれ育ったヴィットー氏は、美容整形と不健康な食事制限を奨励するような美しさの基準が文化的に根付いている環境にいたと言っています。

そんな彼女が自分の体とより適切な関係を持てるようになったのは英国に来てからのことでした。

「過去何年もの間、自分自身の体のイメージにどのように対峙してきたのか振り返ることから、このプロジェクトは始まりました」とヴィットー氏は説明しています。「まず最初に、2、3年前にブラジルで買ったウェストクリンチャー(ウェストを締めつける補正下着)を付けた自分の写真を何枚も撮りました」

「ウェストクリンチャーを買ったのは体をもっと細く見せたかったからです。でも、この装具はかなりきつく締めつけるものなので、ぜい肉が上や下へぽこんとはみ出てしまいました」とヴィットー氏。「ですから、それをごまかすための専用のブラジャー、それから専用のパンティ、それに加えてあれもこれもと必要になるのです」

「それまで一生懸命に隠そうとしていた体の部分を新たな視点で見る方法を提案したらどうかということを考えるようになりました」

このコレクションには、パンツやスカートからワスピー(コルセットの1種)やマキシーワンピース(裾がくるぶしまであるワンピース)まで七着の服があります。

ヴィットー氏によると、それぞれの服は自分がかつて隠したいと思っていた体の部分を表すものとしてデザインしたということです。

「私にとって、このコレクションの本質はサイズではなく、形について提案するものです。美しくなくてはいけないというプレッシャーには、すべてではないにしてもほとんどの女性が悩まされているのです」

「これが解決策だとか、あらゆる人の言い分を代弁しているとか主張するつもりはありません。自分の体の受容は非常に個人的に行うものですから。でも、このコレクションで私が本当にしたかったのは、私たちが『欠点』だと思っていた体の部分にもっと優しいまなざしを向ける方法を提案することでした」

ヴィットー氏のお気に入りの一着は、体にぴったり沿うミディドレス(丈がふくらはぎの中間程度のドレス)。このドレスは様々な種類の重量感ある黒いジャージの生地で作られており、片方の腕が長袖、もう片方は袖なしのデザインになっています。

このドレスが堂々と示しているのは、切り抜かれた穴から乳房の下の部分が露出すること、そして、正面に施された上から下へゆるやかにカーブするメッシュの生地から着用者の肌がうっすらと透けて見えることです。

また、背中のぜい肉を寄せ集めるために楕円形の真鍮の装着部分があることも特徴的です。

もうひとつのお気に入りは、お尻の部分が継ぎ目とダーツで形作られた黒の綿サテンのフレアパンツです。背中側はウェストが高く、正面は低くなっています。

セットになっているストレッチ素材のベルトは腹部を2周して巻き付き、圧力を分散させます。

ヴィットー氏はウェストクリンチャーを再解釈するものとして、紐の付いた、緻密な構造のワスピーもデザインしました。このワスピーは胸の下で体にぴったりと沿い、下腹まで覆います。両側面が切り抜かれており、伸縮性のある紐が肌をはさむように締めつけます。

コレクションにはほかにも、ウェスト部分に切り抜き穴を施した、左右非対称のトップスがあります。片方の肩の部分は幅の広いストラップであり、もう片方の肩の部分にはストラップがありません。厚手のゴムバンドがブラ・カップの代わりにストラップのない側の乳房を水平方向に押さえつけるという考え抜かれたデザインになっています。

他の3作品は、お尻の形にデザインされた特別に短いスカート、乳房の下の部分を露わにする大きな切り抜き穴のある、ぴっちりフィットのミディドレス、体が作る影をたどる曲線の縫い目が施されたマキシーワンピースです。

社会通念としての体形や外見の美の基準にとらわれず、自分の体を肯定的にとらえようというボディ・ポジティブの考えを多くのブランドが取り入れ始めています。ナイキは先頃、ロンドンの旗艦店の女性物の階を徹底的に見直し、特大サイズや障害者スポーツを含む様々な体の形のマネキンを導入しました。

「代表性に気を遣うブランドが増えていると思います」とヴィットー氏はDezeenに答えています。「これは、ファッションショーで多彩な服を見せるというだけでなく、広告やメディアで様々な体形用の服を提示して、服のサイズの選択肢を増やすことを意味しています」

「そうは言っても、ボディ・ポジティブは一過性のブームだとよく言われているのは承知しています。でも、私はまったくそうは思いません。ブームで終わらせるべきではありません。私たちがデザインをするときに考慮に入れるべきことなのです」

「多様なサイズに対応しようとすると製造が複雑になります。これは、結局のところ、小さなブランドや若手のデザイナーにとって最大級の障壁のひとつになります」

「それでも」とヴィットー氏は続けて言っています。「私はもっと多くのサイズばかりでなく、各サイズ内にもっと多くの形が登場したらすばらしいと思っています」

reference:dezeen