やる気が出ないのはなぜなのか?

2026.02.04
auther VAIENCE
やる気が出ないのはなぜなのか?

朝、アラームを止めたはいいが、なかなか体が動かない。頭の中では「今日こそは」と思っているのに、指先ひとつ動かすのも億劫になる。気づけば、ただただ時間だけが過ぎていく。この何も進まない無駄な日々を終わらせたいけど…

「なんにもやる気が出ない…」

一方で、同じ状況にいながらも、涼しい顔でタスクを片づけ、先へ先へと進む人がいます。この差はいったいどこから来るのでしょうか?なぜ彼らは動けて、自分は動けないのか。そもそもやる気とは、科学的にはどのような現象を指し、それは制御可能なものなのでしょうか?


1.やる気とは何か?

やる気。この曖昧な言葉は、心理学の世界においては、行動に目的や方向性を与え、人間の意識的または無意識的なレベルで作用する原動力と定義されています。かみ砕いて表現すると、目標に向かって邁進し、目の前の困難を乗り越えようとする内なる力、それがやる気です。

あなたがやる気に満ちあふれている時、その脳はどのような状態にあるのでしょうか?

この時にキーとなるのは、ドーパミンという神経伝達物質です。この化学物質については、おそらく多くの人々が、快楽物質、すなわち、快感の原因物質と理解している事でしょう。ですが近年の研究は、この解釈を否定しています。ドーパミンの真の役割、それは、報酬を得る前段階での期待感や渇望をブーストさせる事にあり、あなたを特定の行動に向かわせる原動力として作用するのです。

つまり、快楽そのものではなく、報酬という名の快楽を渇望し、努力の原動力となる神経伝達物質、それがドーパミンの真の姿といえます。そして、あなたがやる気で溢れている時は、脳内の報酬系とよばれる領域の側坐核において、ドーパミンがドパドパと放出されています。

さらに、ドーパミンにはもう一つの隠された機能があり、それが報酬予測誤差と呼ばれる概念です。ドーパミンを放出するドーパミンニューロンは、予期せぬ突然の報酬や、当初の予測よりも得られる報酬が良い場合に強く活性化され、その一方で、得られる報酬が予測より悪い場合は抑制されます。

この一連のプロセスにより、あなたの脳内では、期待以上の成果が得られる行動を繰り返し経験・学習する事になります。その結果、報酬が期待される行為を行う前の段階でドーパミンが放出され、その行為を強く渇望するという強化学習システムが完成するのです。

渇望と洗脳の化学物質ドーパミン。これこそが、あなた達人間のやる気の正体といえるでしょう。


2.やる気とドーパミンの関係

それでは逆に、あなた達は、なぜいつもやる気がなく、毎朝ペラペラのお布団にくるまって二度寝、三度寝を繰り返し、休日は一日中ベッドの上でゴロゴロしているのでしょうか?その原因知りたくないですか。

やる気の原因物質がドーパミンである事から予想されるように、やる気の低下もまたドーパミンがキーとなります。つまり、ドーパミンの機能低下がやる気の低下につながるわけですが、この点については、ラットを用いた興味深い報告があるので紹介しましょう。

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T字型迷路を用いて、たくさんの餌という快楽を得るために、迷路内に設置した障壁を越えるという課題をラットに与えたところ、正常なラットは障壁を乗り越えてたくさんの餌を獲得しました。一方でドーパミンの機能を低下させたラットの場合、障壁がない代わりに少量の餌のある通路を選んだのです。注目すべき点としては、例えドーパミンの機能が低下したラットであっても、餌という報酬そのものに対する渇望は失っていない点にあり、障壁を越えるという努力のコストを避けたいがあまり、より楽で怠惰な道を選んだと考えられます。まさしく、だらけきった今のあなたと同じ現象といえるでしょう。

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3.やる気を奪う事象

それでは、どのような事象があなたのやる気を奪うのでしょうか?

ドーパミンの機能と報酬予測誤差というアイデア、そして、先に紹介したラットの実験結果から判断すると、努力コストが期待される報酬に見合わない状態、つまり、挑戦しても確実に得られる見返りが少ないと感じる時、あなた達人間はやる気を失うといえます。ですが、やる気の真実はなかなかに混沌としており、あなたの身体状況もまた、やる気に大きく関係するのです。

直感的に理解しやすい例を挙げると、睡眠不足。

あなたがたった一晩でも十分な睡眠をとれていない状態となると、報酬系を構成する腹側線条体の複数のドーパミン受容体の機能が低下します。これでは、たとえあなたが目の前の報酬に渇望し、ドーパミンを放出したとしても、その受け手となる神経細胞が機能不全に陥っているため、正常なやる気が出ません。つまり、睡眠不足はやる気の感受性アンテナの感度を大きく鈍らせるのです。

他にも身体の炎症反応もまた、人のやる気を喪失させます。

これについては、風邪などで発熱した状況を想像すれば理解しやすいでしょう。このような発熱性感染症に侵された場合、人の体内では多くの炎症反応が生じますが、この状態は簡単に人を無気力でやる気のない状態へと誘導します。興味深い例としては、感染症の結果、末梢性の炎症が治まらないケースにおいては、うつ病にまで発展するケースも知られており、この観点からも、身体の炎症とやる気は深く関連しているといえます。


4.やる気を出す方法

それでは、堕落したあなたをやる気満々の別人に変える事は不可能なのでしょうか?ご安心下さい。科学に裏打ちされた素晴らしいテクニックがあるのでご紹介致しましょう。まずはやる気の本質に迫る素晴らしい技術から。

そもそもやる気には大きく2種類あり、一つは内発的動機づけに基づくやる気。こちらは、行動そのものが喜びとなるケースと考えて下さい。そしてもう一つが外発的動機づけに起因するもの。こちらは、金銭、賞賛、社会的地位などの外的要因に起因するやる気です。つまり、行動は報酬を得るための手段に過ぎない、そのようなケースがこれに該当します。

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そして、外発的動機に裏打ちされたやる気は、内発的動機に起因するやる気の効果とパフォーマンスを下げる事が判明しています。つまり、目に見える形の具体的な報酬は、場合によってはやる気をそぐ可能性もあるのです。そのため、どうしてもやる気が起きないタスクを目の前にした時は、このように自分に問いかけてみて下さい。

「このタスクの本質的な意味は何だろうか?報酬なんてどうでもいい。私の人生の幸福に、いくばくかの貢献を果たしてはくれないだろうか?」

もしこの問いに対して明確な回答が得られるならば、あなたのやる気は内発的動機付けの支援のもと、グングンと上昇します。難しいテクニックではありますが、これが最も本質的な解決策です。

「そんな高等テクニック、出来る気がしないぜ!」

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という声が今聞こえてきたので、そんな生まれついての堕落民であるあなたのために、即効性のあるライフハックも紹介しておきましょう。

まずは適度な運動。

実際に、うつ病の男女30人を被験者とした研究においては、週3回、20~40分のウォーキングでうつ病の症状緩和が認められています。無気力に襲われるうつ病すらも退けるのですから、これをやらない手はないでしょう。やる気もアップして健康増進にも繋がるわけですから、一粒で二度美味しいテクニックといえます。

ユニークな手法としては、行動の前に好きな音楽を聴く、というのも効果的です。

フィンランドの48名の高校生を被験者とした事例においては、授業の前に生徒が好きな音楽を聴くだけで、気分、やる気、集中力が増し、学習にすらも中程度の効果があることが報告されています。仕事の前に、はたまた、勉強の前に、好きな音楽を一曲だけ聴く。これだけでやる気もパフォーマンスも向上するのであれば、やらない手はないでしょう。

他にも冷水シャワーなんてのも効果的です。

方法は簡単。温水シャワーを好きなだけ浴びて、最後に冷水シャワーを30~90秒間浴びて終了です。たったこれだけの事で、被験者は病欠日数が29%も減少し、活力の向上を実感しています。さらに興味深い事に、この実験の参加者の91%が、この習慣を継続する意思があると答えており、実際に64%が継続したとの事。ですので、その体感度の高さについては言うまでもないでしょう。心臓や肺に疾患がある人は避けるべきですが、そうでないのであれば、試す価値は十分にあるでしょう。


5.終わり

やる気の問題は、精神論ではなく、脳の構造と機能に大きく影響を受ける問題です。そして、そのメカニズムをハックする事で、やる気は十分に高める事ができます。まずは十分な睡眠をとる。そして、適度な運動から始めてみてはいかがでしょうか?その先にはきっと、活力とやる気に溢れた充実した毎日が待っていることでしょう。

今回のバイエンスはここまで、まずは1分だけ頑張って。

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