NASAは7月3日、オクラホマ大学の研究によりブラックホールの自転速度、さらにはブラックホールの周囲の物質が光速の70%以上の速度で回転していることが明らかになったと発表した。
学術雑誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載された研究論文によると、天文学者たちは地球から100~110億光年先にある5つの超大質量ブラックホールの自転速度を測定。そのうちの一つは時速約10億kmという、光速に近いかまたは同じ速度で自転しており、他の4つのブラックホールに関してはその半分ほどの速度で自転していた。
さらに、天文学者たちは5つのブラックホールのうちの1つの周りを周回する物質の渦が光速の70%以上で回転していることも発見した。
今回の観測の手がかりとなったのは98~109億光年先にあるクエーサー。クエーサーは周囲の物質を活発に吸収する超大質量ブラックホールの存在を示すものとされており、吸収されつつある物質によって形成された降着円盤の輝きは、ブラックホールが存在する銀河をも上回るほど。しかし、問題となっているクエーサーは遠く離れているため、天文学者たちはそれらを研究するために「重力レンズ効果」として知られる特有の自然現象を利用した。
本質的に、「重力レンズ」とは自然の虫メガネのようなもの。銀河のような巨大な物体が観測したい対象との間に存在すると、その背後にある対象の物体から来る光を曲げたり歪めたりすることが可能となる。これにより、宇宙規模で非常に遠くに存在する物体の拡大または複数の画像の生成が可能になり、学習が容易になるのだ。
NASAのチャンドラX線天文台の助けを借りて、天文学者たちはこのテクニックを使って遠方のブラックホールの回転速度を計算した。その結果、ブラックホールは自身の自転と一致する方向から何十億年にも渡って物質の供給を受けているために、極めて急速に成長して回転しているに違いないとの結論が下された。
過去には比較的容易にブラックホールの質量を測定することができたが、それらの自転速度を測定することははるかに困難であることが証明されていたため、これらの研究は非常に重要なものである。このような結果は、ブラックホールがどのように成長し進化するかを理解するのに役立つのだ。