2005年、セルビアの小さな町に、何千匹ものカエルが降ったと言います。
2009年には、日本で大量のオタマジャクシが降りました。
そして2010年には、オーストラリアのノーザンテリトリーで、活きのよい魚が土砂降りとなったのです。
同様に、魚が降る異常気象は、過去20年だけでもウェールズ、インド、メキシコなどの世界各地で報告されています。
その他では、鳥の嵐が記録されている地域もあります。クモのケースもありました。
今回はそのような「空から大量の生物が降る超常現象」についてご紹介したいと思います。
さて、ここで不思議なことは、こういった生き物はどのように上空にたどり着いたのかということです。
例えば、5年前にオーストラリアであったクモの雨の場合は、単なるクモの「バルーニング」だったようです。
バルーニングとは、クモの幼体が糸を使って空を飛び、気流に乗って長距離移動をするもの。
まったくの自然現象ですが、突如あたり一帯がすべて、分厚いクモの糸に覆われました。
2011年、アーカンソー州とルイジアナ州で、何千羽ものクロウタドリが空から降ってきたのは、おそらくは大みそかの花火に驚いた鳥が、衝突死したものだと考えられます。
説明が難しいのが、水生生物の雨です。
カエルやオタマジャクシが空から降るには、どんな理由があるでしょうか。
今日において、多くの科学者や気象学者たちが考えている原因は「ウォータースパウト」です。
ウォータースパウトとは、海洋や大きな湖などの水面上の竜巻のことです。
熱帯の海でよく見られるものですが、世界各地で発生します。
比較的、気象条件が安定していても発生し、気温と湿度が高く、雲の密度が上昇すれば簡単にできるのです。
標準的なトルネードであれば、紙のような軽量の破片であれば320キロメートル、重量のある鉄製の看板のようなものであれば80キロメートルも運ぶことが知られています。
ウォータースパウトの場合は、それほど強力でないとはいえ、小魚やカエルを吸い上げ、長距離を移動し、考えられもしないような違う場所に落として行くことは、十分ありえます。
近年観測された、生き物が降ってくる「雨」は、同時に嵐や強風を伴っており、ウォータースパウト説は理にかなっています。
生き物が水生生物なのも、説に当てはまります。水辺から遠く離れた場所での生き物の「雨」は、陸のトルネードや、その他の強烈な上昇気流により説明がつきます。
問題は、実際の目撃者が誰もいないことです。水上で強烈な嵐を観測することは困難であり、ウォータースパウトを研究する気象学者には、空飛ぶ魚にあまり注意を払う余裕がなかったのかも知れません。
また、これらの「水陸両用の雨」はたいへん稀であるため、ちょうど発生している場所に居合わせることができなかったのかもしれません。
つまり、ウォータースパウト説はたいへんよくできているにも関わらず、裏付けが取れていないのです。
もしうまく目撃できれば、もう一つの小さな謎を解き明かすことができるかもしれません。
そのもう一つの謎は降ってくるのが、1種類の生き物もしくは1つの種の生き物だけかという問題です。
カエルだけ、魚だけといった単種であり、居住区の近い水棲生物が混じり合うことはありません。
似たようなサイズ、似たような重さの物体が、嵐が終焉する時に、同じタイミングで落下するからだとする研究者もいます。
しかし湖や海であれば、似たようなサイズの異なる生き物がたくさんいるはずだとして、この説に賛同しない研究者もいます。
もう一つの可能性としては、ウォータースパウトが密集した物だけ吸い上げるという説です。
しかしいずれにせよ、ウォータースパウトが実際に生き物を水上に吸い上げる様が目撃できなければ、生物の種類が制限される理由を確定することはできません。
ですから、魚やカエルが空から降って来て、歩道にポトポト落ちても、パニックには陥らないでください。
この世の終焉ではありません。完全に科学的な説明のつく、異常気象にすぎないのですから。