宇宙には様々な天体が存在しています。
鉄の雨が降る星や光をも飲み込む天体、太陽の1000倍以上の質量を持つ星などまるでSF映画の世界に出てくるような環境を持つ天体が数多く存在しているのです。
私たち人類は、日々宇宙に漂う奇妙な天体や宇宙現象を発見しては、この宇宙の奥深さに心を踊らされています。
想像してみてください。1立方センチメートルの角砂糖を手にした時、それが10億トンの重さだったらと。
想像してみてください。スプーン一杯で5億トン以上の重さの物体が存在したらと。
今回は、宇宙の彼方に存在する不思議な天体「中性子星」についてご紹介したいと思います。
太陽のような恒星は、内部で核融合反応を起こしてエネルギーを発生させることで輝いています。
恒星の中心部では、強い重力で物質が圧縮され、水素原子核からヘリウム、炭素、酸素と核融合反応で次第に大きな原子核が作られていきます。
しかし、鉄の原子核になると、それ以上融合しなくなるのです。
鉄より重い原子核は、郭内の陽子同士の電気的反発力が強すぎて核分裂をしやすくなるためです。
中心部が鉄ばかりになると、もはや圧力を保つための熱を核融合で発生できないため、重力で一気に圧縮されます。
その圧力がどれほどのものかというと、地球と同じ大きさの恒星の核が、都市一つ分の大きさにまで圧縮されてしまうほど。
この圧力によって、外層は光速の25%の速度で内側に縮まり、最終的に爆発します。
爆発によってコアにある鉄が宇宙にまき散らされます。この現象が「超新星爆発」と呼ばれるものです。
太陽の約8倍以上の質量を持つ恒星だけが超新星爆発を起こすことができます。超新星爆発によって放たれる光は宇宙全体を照らし出すほどの強さ。
そして、太陽の約8倍~30倍ほどの質量の恒星が超新星爆発を起こした後に残るものこそが問題の中性子星です。
中性子星の質量は地球100万個分というとてつもない重さですが、その体積は1辺25kmの立方体と同じくらいしかありません。
その密度の高さは角砂糖ほどの大きさの中性子星がエベレストと同じ重さになるほど。
そのため、中性子星が持つ重力はブラックホールに次いで宇宙で2番目に強力。中性子星の近傍を横切った光はその重力によって進行方向が曲げられてしまいます。
さらに、中性子星の表面温度は100万℃に達します。なお、太陽の表面温度は6000℃。
そして中性子星は、大気・地殻・コアの3つの層で構成されています。
地殻は超新星によって残った鉄が互いに金属結合してとてつもない硬度を誇ります。さらにコア側に近づくにつれて重力による圧力が増すため、鉄原子同士が凝縮してくっつき合うようになっていると考えられています。
地殻の中ほどでは、鉄原子は線状に接着し、さらにその内側では層状に接着していると考えられています。線状に接着した鉄原子を「スパゲッティ」、層状に接着した鉄原子を「ラザニア」にたとえ、中性子星の地殻は「核のパスタ」と呼ばれています。
この核のパスタは宇宙一の硬度を持ち、基本的には「壊れない物質」だと考えられています。
その核のパスタのさらに内側にあるのが、中性子星のコア。
中性子星のコアについては未だ謎が多いと言います。
中性子星が崩壊する際には、超高速で回転します。
この高速回転と中性子星が持つ磁場が合わさることで、中性子星は巨大な電波を生み出すようになります。
この状態になった中性子星は、「パルサー」と呼ばれています。パルサーが持つ磁場は、地球の磁場の1000兆倍も強力。
2つの中性子星同士が融合してキロノヴァという大爆発を引き起こすことも知られています。
金・ウラン・プラチナ(白金)などの重金属は、このキロノヴァによって生み出されたと考えられています。
最終的に、キロノヴァを引き起こした2つの中性子星は合体してブラックホールとなります。
超新星爆発やキロノヴァによって、宇宙空間にはさまざまな物質がまき散らされることになります。この物質はお互いの重力によって引かれ合い、恒星や惑星に成長します。
私たちの体を構成している物質や身の回りの物質も中性子星がはるか昔に生み出した元素によって成り立っているのです。
つまり、私たちは皆、遠い昔に超新星爆発を経験しているということなのかもしれません。